はじめに介護現場における喫緊の課題として、介護人材の確保が挙げられる。その解決策として、介護報酬改定において介護サービス事業所の生産性向上を推進する取り組みが導入されました。1. 生産性向上推進体制加算とは?介護サービスの質を確保し、職員の負担を軽減するための取り組みを評価する加算となります。具体的には、見守り機器等のテクノロジー導入と、それに伴う業務改善の継続、効果に関するデータ提出などが評価対象となります。 本加算の対象となるのは「短期入所系サービス」、「居住系サービス」、「多機能系サービス」、「施設系サービス」の4つ。通所施設や訪問介護施設は対象外なので注意が必要です。2. 加算の種類と算定要件利用者ごとに一月当たり一回の算定。(Ⅱ) 月額10単位:‣1つ以上のテクノロジー機器を導入する(※テクノロジー機器は、見守り機器・インカム・介護記録ソフトウェアや介護記録の作成を効率的に行うことができるICT機器などが該当します。)‣生産性向上ガイドラインにもとづいた業務改善をする‣事業年度ごとに実績データを厚生労働省に提出する(Ⅰ) 月額100単位:‣加算(Ⅱ)の要件を満たしている‣テクノロジー機器を複数導入している(※見守り機器・インカム・介護記録ソフトウェアや介護記録の作成を効率的に行うことができるICT機器の3種類すべての導入が必要です。)‣介護職員が介護に集中できる時間帯を設けることや介護助手の活用などにより、役割分担を行っている加算(Ⅱ) から開始し、段階的に(Ⅰ) へ移行することが想定されています。3. 生産性向上に向けた具体的な取り組み① 委員会の設置施設の管理者、介護職員、ユニットリーダーなどが集まる委員会を、3ヶ月に1回以上開催します 。委員会では、下記の内容を検討します。利用者の安全とケアの質の確保見守り機器などの情報を使って、利用者の方の状態を把握します。必要があれば、介護機器の使い方を見直したり、安全のための対策を考えます。また、事故やヒヤリハットの事例を分析して、再発を防ぐ方法も検討します。職員の負担軽減と勤務状況への配慮アンケートやヒアリングで、職員の負担状況を把握します。負担を減らすために、適切な人員配置や処遇改善を検討します 。休憩時間や時間外勤務の状況も確認します。介護機器の定期的な点検毎日、介護機器に不具合がないかチェックし、開発メーカーと協力して定期的に点検を行います。職員に対する研修介護機器の使い方、ヒヤリハット事例、再発防止策などについて研修を行います 。(Ⅰ)を取得する場合は、役割分担による業務効率化のための研修も必要です 。② 介護機器の導入施設の状況や課題に合わせて、必要な介護機器を選びます 。(Ⅰ)の場合全ての居室に見守り機器を設置します。同じ時間帯に勤務する全ての介護職員がインカムなどのICT機器を使用します。介護記録ソフトウェアやスマートフォンなどのICT機器も活用します。(Ⅱ)の場合上記の3種類の介護機器のうち、1つ以上を使用します。③ 成果目標と評価業務の効率化、ケアの質の確保、職員の負担軽減といった成果について、利用者や職員へのアンケート調査や業務時間の分析などを通して、客観的に評価します。④ 厚生労働省への報告毎年度1回、生産性向上に関する実績データを報告します 。(Ⅰ)の算定を開始する際には、各種指標に関する調査結果のデータ提出も必要です。4.まとめ生産性向上推進体制加算は、介護現場の課題を解決するために作られた重要な加算です。介護職員一人ひとりがこの加算について理解し、積極的に導入を進めることで、働きやすく、質の高い介護サービスを提供できるようになるでしょう。先日のベースアップ評価料にも言えることですが、報告義務があり届出するのに現場に負担感があるので、労働生産性や賃金アップに関する評価に関してもう少し施設要件のハードルを下げてもいい気がします。