閑散期にも継続して通ってくれる患者さんの割合を増やすには、季節や流行性疾患に関わらず定期的に来院する生活習慣病などの慢性疾患患者の集患対策を強化することが重要です。かかりつけ医制度が推奨される中、慢性疾患患者の集患強化は必須と言えます。特に特定疾患療養管理料を算定できる患者は、通常の診療単価よりも高くなる傾向があり、継続的な通院が見込めるため、安定収入の確保に繋がります。特定疾患療養管理料とは、厚生労働大臣が定める対象疾患を主病とする患者に対し、計画的な医療管理を行うことを評価する診療報酬点数です。200床以上の病院は算定対象外であり、プライマリケア機能を担うかかりつけ医に対する評価と捉えられます。2024年度の診療報酬改定では、三大生活習慣病(糖尿病・脂質異常症・高血圧症)が本管理料から除外され、生活習慣病管理料へ移行されました。しかし、循環器専門医であれば心不全や不整脈、呼吸器専門医であればCOPDや喘息、消化器専門医であれば胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃炎など、他にも悪性新生物や脳血管疾患などの対象患者が存在します。診療所が特定疾患療養管理料を算定できる患者を受診した場合の金額を考えてみましょう。再診料:73点特定疾患療養管理料:225点外来管理加算:52点処方箋料:60点一般名処方加算1:10点特定疾患処方管理加算:56点合計:476点特定疾患を持たない患者を診察する場合(上記項目のうち、特定疾患療養管理料と特定疾患処方管理加算を除いた195点)と比較して、2倍以上の点数となります。診察と処方箋の発行において、特定疾患の有無で点数が異なります。その点数に見合った手間をかける必要があります。例えば、特定疾患療養管理料は、特定疾患患者に対し「治療計画に基づき、服薬、運動、栄養等の療養上の管理を行った場合に、月2回に限り算定」できます。同管理料の算定要件として、「管理内容の要点」を診療録に記載することが求められます。外来管理加算は、処置やリハビリテーション等を行わずに、計画的な医学管理を行った場合に算定できます。算定にあたり、「医師は丁寧な問診と詳細な身体診察を行い、それらの結果を踏まえて、患者に対し症状の再確認を行いつつ、病状や療養上の注意点等を懇切丁寧に説明するとともに、患者の療養上の疑問や不安を解消するため」、患者からの聴取事項や診察所見の要点を診療録に記載する必要があります。SOAP形式での記載が有効です。SOAP形式とは、「Subject(主観的情報)」、「Object(客観的情報)」、「Assessment(評価)」、「Plan(計画)」の頭文字を取ったもので、以下の内容を指します。S(Subject): 問診で患者から得られた情報O(Object): 身体診察によって得られた所見A(Assessment): SとOの内容から分析・考察した「経緯と評価」P(Plan): Aで決定した治療方針・計画と指導SOAP形式でカルテ記載をすれば、特定疾患療養管理料と外来管理加算の記載要件を満たせます。ただし、地方厚生局が行う医療機関に対する個別指導では、両点数の算定において「画一的ではなく、具体的に記載すること」という指摘があります。前回の記載内容をそのまま転用すると、画一的であるとして指摘の対象になるため注意が必要です。以上の点を踏まえ、特定疾患の患者を確保することで、毎月の最低収支予測が立てやすくなります。閑散期にも継続して通ってくれる患者さんの割合を増やすためには、以下の対策が考えられます。定期的なフォローアップ: 患者に対し定期的なフォローアップを行い、健康状態の確認や治療計画の見直しを行い、継続的な関心を維持します。教育と啓発活動: 生活習慣病や慢性疾患に関する教育を行い、患者自身が病気の管理に積極的に関与できるようにします。セミナーやワークショップの開催も効果的です。個別対応の強化: 患者一人ひとりのニーズに応じた個別対応を強化し、信頼関係を築きます。特に慢性疾患を持つ患者には、個別の治療計画を提案し、進捗を確認することが重要です。患者の声を反映: 患者からのフィードバックを受け入れ、診療内容やサービスの改善に努め、満足度を向上させます。地域との連携: 近隣のクリニックや病院との連携を強化し、新たな患者獲得につなげます。これらの対策を通じて、閑散期にも患者が継続的に通院する環境を整えることができるでしょう。