医療機関を運営する上で、院内掲示や広告規制は重要なルールです。これらは患者への適切な情報提供を確保し、医療サービスの信頼性を守るために設けられています。今回は、新規開業医や医療従事者の方々が知っておくべき院内掲示と広告規制について詳しく解説します。----------------------------------------1. 院内掲示義務とは?医療機関では、患者が安心して診療を受けられるように、必要な情報を院内に掲示する義務があります。以下が具体的な掲示内容です。1.1 保険医療機関の標示すべての保険医療機関は、「保険医療機関である旨」を外から見やすい場所に表示する必要があります。例えば、入口付近に医療機関名とともに標示することで、患者が施設の性質を容易に理解できるようにします。1.2 管理者情報の掲示医療法第14条の2に基づき、管理者の氏名や診療に従事する医師の情報、診療時間を掲示する義務があります。これにより、患者が医療機関の運営状況を把握しやすくなります。1.3 保険外負担に関する掲示保険診療外の費用が発生する場合は、その内容を具体的に掲示する必要があります。例えば、「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて」で例示として掲げるもの等について、患者から費用を徴収する場合には、個々の「サービス」や「物」は項目ごとに要する実費の掲示が必要です。、患者にとってわかりやすい情報提供が求められます。1.4 明細書の発行状況明細書を交付する医療機関であることを患者に示すための掲示も必要です。1.5 その他施設基準に基づく掲示施設基準の中には掲示を義務付けているものが多くあります。また、名称のみの掲示だけでなく、具体的な説明等の掲示が定められているものもございます。なお、施設基準を届出ていたとしても未掲示の場合は、指導等の対象となります。注意してください。施設基準に掲示の指示がされていない場合であっても、算定基準の通知等において掲示が要件となっているものもありますので注意してください。なお、上記以外であっても患者の権利(個人情報保護に関する掲示)や利便性等を考慮する等、適切に院内掲示等を行う事が求められています。1.6 施設基準に基づくホームページ掲載以上の院内掲示義務は、ホームページを運用している医療機関はホームページ掲載も必要となります(詳細はこちら)。併せて、「医療DX推進:診療報酬改定でホームページ掲載が義務化!」でも述べましたが令和7年6月1日より、ホームページ掲載が必要な施設基準もありますので確認が必要です。----------------------------------------2. 医療広告規制とは?医療機関の広告は、患者に対して正確で信頼性のある情報を提供することを目的に厳しく制限されています。以下が広告規制のポイントです。2.1 広告可能な内容広告に記載できる内容は法令で明確に定められています。以下の内容のみ広告可能であり、虚偽の記載は不可です。① 医師である旨。② 診療科名(医療法第6条の6で規定)。③ 診療所の名称、電話番号、所在地、管理者氏名。④ 診療日・診療時間・予約診療の有無。⑤ 法令に基づく指定医療機関である旨。⑥ 入院設備の有無や病床数。⑦ 診療に従事する医療従事者の情報(氏名、役職、略歴など)。⑧ 医療相談や医療安全確保や個人情報保護に関する措置。⑨ 紹介可能な他の医療機関やサービス。⑩ 医療情報の提供に関する事項。⑪ 診療内容(検査、手術など)。⑫ 平均入院日数や患者数など、医療結果に関する情報。⑬ その他厚生労働大臣が定める事項。これらの情報は患者にとって必要なものであり、虚偽や誇張は許されません。2.2 禁止事項広告規制では以下の内容が禁止されています:① 他の病院・診療所と比較して優良である旨の広告。② 誇大広告。③ 客観的事実を証明できない内容の広告。④ 公序良俗に反する内容の広告。また、ビラやチラシ、インターネットのバナー広告や院外掲示物も広告として扱われ、規制対象となります。一方、医療機関独自のホームページは広告とみなされませんが、法令に違反する内容を掲載することは認められません。2.3 診療科名の表示例診療科名は「内科」「外科」などの一般的な名称だけでなく、「糖尿病内科」「乳腺外科」など特定の疾患や部位に基づく名称も含まれます。ただし、厚生労働省の通知に基づき適切に表示する必要があります。----------------------------------------3. 規制違反の罰則院内掲示や広告規制に違反した場合、医療法第73条および第75条に基づき罰則が科される可能性があります。例えば、誇大広告を行った場合や必要な掲示を怠った場合、開設者に対して罰金などの処罰が課されることがあります。----------------------------------------まとめ院内掲示や広告規制は、医療機関が患者に対して信頼性のある情報を提供し、適切な医療サービスを維持するために重要な役割を果たします。新規開業医や医療従事者の方々は、これらのルールをしっかりと理解し、法令に基づいた運営を心がけることが求められます。患者が安心して医療を受けられる環境を整えるために、掲示内容や広告の取り扱いに注意を払いましょう。具体的な規制内容については、厚生労働省のホームページや「医療広告ガイドライン」を参考にしてください。----------------------------------------