みなさんは毎年誕生月に「ねんきん定期便」というハガキが送られてくると思いますが、特に50歳以上の方には年金の見込み額が記載されています。その見込み額の中に「経過的加算」という言葉が目に入ることがあると思います。「経過的加算って何?」と疑問に思ったことはありませんか?今回は「ねんきん定期便」に記載されている「経過的加算」について、わかりやすく解説していきます。----------------------------------------「経過的加算」ってどんな年金?まず、「経過的加算」とは、厚生年金の一部として65歳以降に受け取れる年金の上乗せ部分のことです。国民年金だけの人は対象外です。金額は人によって異なり、年間数十円から数百円、多い場合でも年間数万円程度です。金額が小さいため、あまり注目されないこともありますが、実はこれ、過去の年金制度の名残として存在しているものなんです。----------------------------------------「経過的加算」の仕組みを簡単に説明!「経過的加算」は、昭和61年3月までの古い厚生年金制度の「定額部分」の名残です。この「定額部分」は、昭和61年4月に基礎年金制度が導入された際に「老齢基礎年金」に移行しました。ただし、「定額部分」と「老齢基礎年金」の計算方法が少し異なっていたため、65歳になったときに年金額が減ってしまう人が出てくる可能性がありました。そこで、その差額を補うために「経過的加算」という仕組みが設けられたのです。----------------------------------------「経過的加算」の役割は?「経過的加算」は、厚生年金の加入期間のうち、老齢基礎年金に反映されない期間(例えば20歳前や60歳以降の期間)に対応する金額を補うものです。具体的には、厚生年金に加入していた期間に応じて、老齢基礎年金に近い金額を上乗せして支給する仕組みです。これにより、年金額が減ることなく、一定の補償がされるようになっています。----------------------------------------「経過的加算」の計算方法基本的な考え方は以下の通りです。計算式(令和7年度の場合):経過的加算額 A-BA. 定額部分の金額 1,734円 × 厚生年金加入月数(上限480カ月)B. 同じ期間に対応する老齢基礎年金の金額 83万1,700円 × 厚生年金加入月数(20歳~60歳に限る) ÷ 480カ月【具体例】例えば、22歳から60歳までの38年間(456カ月)厚生年金に加入していた場合と22歳から62歳までの40年間(480カ月)厚生年金に加入していた場合を考えてみましょう。(1)60歳までの場合 * 定額部分の金額 1,734円 × 456カ月 = 79万704円 * 同じ期間に対応する老齢基礎年金の金額 83万1,700円 × 456カ月 ÷ 480カ月 = 79万115円 * 経過的加算額 79万704円 -79万115円 = 589円この場合、年間589円が「経過的加算」として上乗せされることになります。(2)62歳までの場合 * 定額部分の金額 1,734円 × 480カ月 = 83万2,320円 * 同じ期間に対応する老齢基礎年金の金額 83万1,700円 × 456カ月 ÷ 480カ月 = 79万115円 * 経過的加算額 83万2,320円 - 79万115円 = 42,205円この場合、年間42,205円が「経過的加算」として上乗せされることになります。大学を卒業して会社員として厚生年金に加入して60歳定年まで働いた方などは、定年後も厚生年金に加入することで、厚生年金の額が増えるだけでなく「経過的加算」も年間4万円ほど増やすことができることになります。----------------------------------------なぜ「経過的加算」は今も存在しているの?「経過的加算」は、過去の制度の名残として存在しています。もともと厚生年金の「定額部分」が基礎年金に移行した際に、年金額が減らないようにするための措置として設けられたものです。ただし、「経過的加算」という名前には「過渡期の制度」という意味合いが含まれており、将来的にはその役割を終えて消滅する可能性があります。とはいえ、一度支給が開始されれば途中で打ち切られることはほとんどないと考えられます。----------------------------------------まとめ「経過的加算」は、ねんきん定期便に記載される、老齢厚生年金に上乗せされる比較的小さな金額です。そのルーツは古い厚生年金制度にあり、実質的には老齢基礎年金を補完する役割を持っています。ねんきん定期便を見て「経過的加算」の金額を確認してみると、「こういう仕組みなんだな」と理解が深まるかもしれません。年金制度は複雑ですが、少しずつ知識を増やしていくことで、将来の生活設計に役立てることができます!----------------------------------------