会社を退職すると、年金の手続きがこれまでと変わります。ご自身の状況に応じて必要な手続きや保険料の納付について、正しく理解しておくことが重要です。1. 年金加入者の3つの区分まず、日本の公的年金には以下の3つの区分があり、退職によってこの区分が変わることがあります。第1号被保険者: 自営業者、フリーランス、学生、無職の方などが該当します。保険料は自分で納付します。第2号被保険者: 会社員や公務員など、厚生年金に加入している方です。保険料は給与から天引きされます。第3号被保険者: 第2号被保険者に扶養されている配偶者です。自己負担はありません。 (※)注意点-健康保険と違って配偶者のみで20歳以上60歳未満と年齢制限があります。そのため、会社員や公務員の子や親が健康保険の被扶養者となっても、年金については第3号被保険者には該当しないので注意が必要です。会社を退職し、すぐに次の会社に就職しない場合、多くは「第2号」から「第1号」へ切り替える手続きが必要になります。2. 退職後の状況別シナリオと手続き退職後の進路によって、手続きは異なります。ケースA:退職し、次の就職先が決まっていない・自営業になる場合退職日の翌日から「第1号被保険者」となり、14日以内にお住まいの市区町村で国民年金への切り替え手続きが必要です。保険料は、資格を取得した月(退職日の翌日が属する月)の分から自分で納めることになります。ケースB:短い空白期間を経て、再就職する場合例えば、3月末に退職し、4月16日から新しい会社に就職する場合、4月1日から15日までの空白期間は「第1号被保険者」となります。この場合も一度、第1号への切り替え手続きが必要ですが、4月分の国民年金保険料を自分で納付する必要はありません。これは、同じ4月中に新しい会社で厚生年金(第2号)に加入するため、そちらで4月分の保険料が給与天引きされるからです。国民年金保険料払わないなら手続きいらないのではということにはなりません。きちんと第1号への切り替え手続きを忘れないようにしましょう。3. 最重要ポイント:退職日で厚生年金保険料が変わる厚生年金の保険料は、退職日の翌日である「資格喪失日」が属する月の前月分までを納付するのが原則です。このため、退職日が1日違うだけで、支払う保険料が1ヶ月分変わることがあります。月の「途中」で退職した場合(例:4月29日退職)資格喪失日は4月30日となり、支払う厚生年金保険料は3月分までです。4月分の厚生年金保険料はかかりませんが、そのまま翌日に転職して厚生年金の被保険者や第3号被保険者にならない限り、4月分は国民年金保険料を支払う必要があります。月の「末日」で退職した場合(例:4月30日退職)資格喪失日は翌日の5月1日となるため、支払う厚生年金保険料は4月分までとなります。給与からは3月分と4月分の2ヶ月分が天引きされることもあります。4. 特殊なケースと重要な注意点同じ月内の入社と退社: 同じ月内に厚生年金に加入し、すぐに退社した場合でも、原則としてその月1ヶ月分の保険料が徴収されます。ただし、その月内に再度、国民年金(第2号被保険者を除く)や別の会社の厚生年金に加入した場合は、先に徴収された保険料が後から還付される仕組みがあります。国民年金保険料の前納割引制度: 第1号被保険者として国民年金保険料を自分で納める場合、まとめて前払い(前納)することで保険料が割引されます。6ヶ月、1年、2年の前納があり、長期間分をまとめて支払うほど割引額は大きくなります。資金に余裕がある場合は活用するとお得です。手続きの期限と免除制度: 退職後の各種手続きは、原則として14日以内です。もし失業などで保険料の支払いが困難な場合は、未納のままにせず、必ず市区町村の窓口で「免除・納付猶予」の申請について相談してください。