「老後の生活、夫婦2人の年金だけだと少し不安…」「厚生年金に長く入っていたけど、何か有利な制度はないかな?」そんな風に思っている方もいらっしゃるかもしれません。実は、厚生年金に20年以上加入していた方が、特定の条件を満たすと、いつもの年金にプラスして「年金の家族手当」とも言える特別な手当がもらえる制度があるのをご存知でしたか?それが今回ご紹介する「加給年金(かきゅうねんきん)」です。この制度、知っているのと知らないのとでは、将来もらえる年金額が年間で約40万円も変わる可能性がある、とても重要な制度です。この記事を読めば、加給年金のキホンから、自分がもらえるかどうかのチェックポイントまで、しっかり理解できます!そもそも「加給年金」って何?加給年金とは、厚生年金に20年以上加入した人が65歳になったときに、その人に生計を維持されている「年下の配偶者」や「子」がいる場合に、老齢厚生年金に上乗せして支給される年金のことです。簡単に言えば、「長年、会社員として頑張ってこられた方に、ご家族を養うためのサポートとして年金を加算しますよ」という、国からのボーナスのようなものです。ただし、この制度はあくまで厚生年金の加入者を対象としたもの。自営業者などが加入する国民年金だけでは対象にならないので、注意してくださいね。【重要】加給年金をもらえるための3つの条件では、具体的にどんな条件を満たせば加給年金をもらえるのでしょうか?主に以下の3つをすべてクリアする必要があります。1. 厚生年金の加入期間が20年以上あることまず大前提として、厚生年金の被保険者期間が原則として20年以上必要です。転職などで加入期間が途切れている場合でも、トータルで20年(240ヶ月)以上あればOKです。2. 65歳になった時点で、生計を維持している配偶者や子がいること「生計を維持している」とは、簡単に言うと「その人のお給料や年金で家族が暮らしている」状態のことです。具体的には、以下の家族が対象となります。配偶者:65歳未満であること(事実婚や内縁関係でもOK)子:18歳になって最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある子ポイントは「年下の配偶者」という点です。ご自身が65歳になったときに、奥様(または旦那様)がまだ65歳になっていない必要があります。3. 配偶者の年収が850万円未満であること生計を維持されている配偶者自身の収入にも条件があります。対象となる配偶者の前年の年収が850万円未満(または所得が655.5万円未満)であることが必要です。残念ながら…もらえないケースとは?「うちは全部当てはまりそう!」と思った方も、ちょっと待ってください。実は、先ほどの条件をクリアしていても、加給年金がもらえなかったり、途中でストップしてしまったりするケースがあります。1. 配偶者が「年上」の場合加給年金は「年下の配偶者」を支えるための制度です。そのため、ご自身が65歳になった時点で、配偶者がすでに65歳以上の場合は対象外となります。2. 配偶者が自分の年金(厚生年金加入20年以上)を受け取っている場合これが一番よくあるケースです。配偶者が自身の老齢厚生年金(加入期間20年以上)や障害年金の受給権が発生するようになると、その時点で加給年金は支給停止となります。「配偶者自身が年金で自立できるようになった」と見なされるためです。例えば、夫が65歳で加給年金をもらい始めても、妻が63歳で自身の老齢厚生年金を繰上げ受給した場合や、その後65歳になって老齢厚生年金を受け取り始めた時点で、夫の加給年金はストップします。そのため妻の年金の繰上げを検討する場合は注意が必要です。3. 離婚した場合当然ですが、離婚して配偶者でなくなると、生計を維持している関係がなくなるため、加給年金は支給停止となります。手続きはどうすればいい?加給年金をもらうための特別な申請は、基本的には必要ありません。65歳になって老齢年金を請求する際に提出する「年金請求書」に、配偶者や子の情報を記入する欄があります。手続きをスムーズに進めるポイントは「マイナンバー」です。年金請求書にご自身と対象となる配偶者・子のマイナンバー(個人番号)を正しく記載すれば、原則として住民票の写しや所得証明書といった添付書類を省略することができます。これにより、役所などで書類を取得する手間が省け、手続きがぐっと楽になります。ただし、夫婦関係や親子関係を確認するための戸籍謄本は、マイナンバーを記載しても別途必要になる場合がありますのでご注意ください。もし記載を忘れたり、間違えたりしてしまうと、加算が遅れたり、もらい損ねてしまったりする可能性があるので、年金請求の手続きは慎重に行いましょう。そのため、ご自身での手続きに不安な方は、年金事務所や街角の年金相談センターの窓口で相談しながら進めるのがおすすめです。 窓口の担当者が丁寧に教えてくれます。まとめ:夫婦の年金戦略を考える上で超重要!いかがでしたか?加給年金は、対象者にとっては老後の生活を大きく支える、とてもありがたい制度です。自分の厚生年金加入期間は20年以上あるか?配偶者は年下か?配偶者が年金をもらい始めるタイミングはいつか?この3つをしっかり確認し、自分たちが加給年金の対象になるのかを把握しておくことが、夫婦の年金戦略を立てる上で非常に重要になります。ぜひ一度、ご夫婦で「ねんきん定期便」などを確認しながら、自分たちのケースを話し合ってみてください。 なお、老齢厚生年金の配偶者加給年金については2028年4月より加算額が1割縮小されることになっていますが、改正前からの老齢厚生年金の受給権者に加算される配偶者加給年金(改正前の額)は改正後も引き続き加算されます。改正点については、今後変更になる可能性もありますので、何か情報が得られましたらまた提供させていただきます。