医師事務作業補助者は、医師の指導の下で事務的な業務をサポートする職種です。病院によっては、医療秘書や医療クラーク、メディカルアシスタント(MA)などと呼ばれることもあります。診療報酬において医師事務作業補助体制加算が2008年に新設されて以来、診療報酬は連続して引き上げられています。また、医療関係職の賃上げの項目で、薬剤師や看護師と共に、医療を支える職種として明確に位置づけられていることが分かります。ただし、現在のところ入院料の加算のみの評価であり無床診療所いわゆるクリニックは算定できません。業務内容医師事務作業補助者の主な業務内容は以下の通りです:• 医療文書の代行入力:診断書や紹介状などの作成をサポートします。• 診療記録の代行入力:医師の外来診療や病棟回診に同席し、診療記録を入力します。• 会議の準備や手術の症例登録:院内での会議の準備や手術の症例登録を行います。• 診療データの整理:厚生労働省などに報告する診療データを整理します。業務内容は多岐にわたり、病院ごとの実情により特色があります。やってはいけない業務医師事務作業補助者は、医師の指示を受けていない業務を行うことはできません。以下は、医師事務作業補助者がやってはいけない主な業務です:• 受付・窓口業務• 診療報酬(レセプト)の請求業務• 医療機関の運営・経営のためのデータ収集• 看護業務の補助• 物品の運搬(医師の指示がない単なる運搬業務)ただし、医師にとって必要な運搬業務で、医師の指示がある場合には医師事務作業補助者が担当しても問題ありません。医師事務作業補助者の仕事内容の線引きは、医師が行っている業務かどうかということが目安になります。医師事務作業補助者体制加算医師事務作業補助者体制加算は、医師の事務作業をサポートするための体制を整えることで、診療報酬に加算される制度です。この加算を受けるためには、指定された研修を受ける必要があります。(以下厚生労働省告示「診療報酬点数表」より引用) ”当該責任者は、医師事務作業補助者を新たに配置してから6か月間は研修期間として、業務内容について必要な研修を行うこと。なお、6か月の研修期間内に32時間以上の研修(医師事務作業補助者としての業務を行いながらの職場内研修を含む。)を実施するものとし、当該医師事務作業補助者には実際に医師の負担軽減及び処遇の改善に資する業務を行わせるものであること。研修の内容については、次の項目に係る基礎知識を習得すること。また、職場内研修を行う場合には、その実地作業における業務状況の確認及び問題点に対する改善の取組みを行うこと。①医師法、医療法、医薬品医療機器等法、健康保険法等の関連法規の概要②個人情報の保護に関する事項③当該医療機関で提供される一般的な医療内容及び各配置部門における医療内容や用語等④診療録等の記載・管理及び代筆、代行入力⑤電子カルテシステム(オーダリングシステムを含む。)また、当該責任者は、医師事務作業補助者に対する教育システムを作成していることが望ましい。”研修を行った場合は記録をきちんと残しておくことが、厚生局の適時調査でも求められているので注意が必要です。医師の働き方改革医師の働き方改革は、医師の労働時間の上限規制を含む改革です。医師事務作業補助者は、医師の業務負担を軽減するための重要な役割を担っており、働き方改革の推進においてタスクシフトやタスクシェアの面でも期待されています。医師事務作業補助者は、医師の業務をサポートすることで、医療の質の向上に貢献しています。今後もその役割はますます重要となるでしょう。今後の課題医師の働き方改革という喫緊の課題に貢献しているにもかかわらず、医師事務作業補助者の待遇面に関してはその評価に見合っていないのが現状です。非常勤職員で賃金もなかなか上がらないので中堅層の離職率が高い。研修要件はあるものの人手不足の影響もあり教育制度が不十分である。診療報酬が入院料の加算の評価のみでクリニックでは算定できないなど課題はいろいろあります。医師事務作業補助者の多方面での底上げは医療機関の働き方改革の達成へのカギとなるでしょう。