👨⚕️ 医師から「治療のためにコルセット(装具)を作りましょう」と言われた時、お金のことが心配になりますよね。実は、医療用の装具は、病院でのいつものお会計(3割負担など)とはまったく違うルールになっています。この記事では、患者さんも医療事務スタッフも知っておきたい「装具の費用と保険の仕組み」を、誰でもわかるように解説します。【最重要】装具のお金は「2回払い」で「2種類」あるまず、一番大切なポイントです。装具を作るとき、患者さんは「2種類の費用」を「別々のタイミング」で支払うことになります1. 処置の技術料(病院へ)(上図1)いつ払う?: 採寸・型取りをした日どう払う?: いつもの診察と同じ(1〜3割)で、病院の窓口で支払います。特徴: これは「型取り」や「採寸」に対する技術料です。例: 技術料が3,000円(10割)なら、窓口負担は900円(3割の場合)。2. 装具そのものの代金(装具屋さんへ)(上図2)いつ払う?: 装具を受け取るときどう払う?: いったん全額(10割)を支払います。特徴: あとで申請すれば、保険分(7〜9割)が戻ってきます(=療養費・償還払い)。例: 10万円のコルセットなら、まず10万円を支払う。この2つは全くの別物です。患者さんが「え、病院でも払ったのに、装具屋さんにも全額払うの!?」と驚かないよう、事前に説明できるとスムーズです。「採寸(さいすん)」と「採型(さいけい)」って何が違うの?病院で支払う「技術料」には、2つのパターンがあります。①採寸(さいすん) 算定項目:治療用装具採寸法(1肢につき)200点やること: メジャー(巻尺)で、腕や足、腰回りのサイズを測ること。対象: 比較的シンプルな装具や、既製品をベースに調整するサポーターなど。②採型(さいけい) 算定項目:治療用装具採型法 体幹装具 700点 四肢装具(1肢につき) 700点 その他(1肢につき) 200点やること: 石膏(せっこう)ギプスなどを使って、患部の「型」を直接取ること。対象: 完全オーダーメイドの複雑な装具(足の短下肢装具など)当然、手間のかかる「採型」のほうが、病院が請求する技術料(医療事務スタッフ向けの言葉でいう「J130」)は高くなります。併せて実施した場合は主たるもの(高いもの)のみの算定になります。装具が完成し、お金が戻ってくるまでの6ステップでは、実際にどのような流れになるのか、ステップバイステップで見ていきましょう。ステップ1: 診察と「装具の指示」 👨⚕️ 医師が「治療に装具が必要」と判断します。ステップ2: 採寸 または 採型 医師の指示のもと、専門の義肢装具士(装具屋さん)が患者さんの型取りや採寸を行います。【患者さん】: この日の病院会計で、この「技術料」の自己負担分(1〜3割)を支払います。【医療事務】: この実施日に「J130(装具採型・採寸料)」を忘れずに算定します。ステップ3: 装具の完成と支払い 💳 後日、完成した装具が納品されます。【患者さん】: この時、装具業者(または病院の窓口経由)に、一旦、装具代金の全額(10割)を支払います。重要!: 必ず「領収書」をもらってください。これは払い戻し申請に必須です。ステップ4: 適合チェック👨⚕️ 医師が、完成した装具が患者さんの体にぴったり合っているか、治療に適しているか最終チェックをします。ステップ5: 書類(払い戻しセット)の準備 📄【医療事務】患者さんが払い戻しを申請するために、以下の書類を作成し、お渡しします。医師の意見書・同意書(「この治療にこの装具が必要です」という証明書)装具装着証明書(「確かにこの装具を装着させました」という証明書)(患者さんが用意するもの)装具の領収書(ステップ3でもらったもの)(患者さんが用意するもの)療養費支給申請書(保険証の発行元からもらいます)ステップ6: 保険者への申請と払い戻し 💰【患者さん】: ステップ5の書類一式を、ご自身の保険証の発行元(協会けんぽ、市役所の国保窓口など)に提出します。約2〜3ヶ月後、審査が通れば、指定した口座に保険負担分(支払った10割のうち7〜9割)が振り込まれます。よくある質問と注意点(まとめ)Q. 患者さん向け:なぜこんなに面倒なの?A. 装具は「病院での治療(現物給付)」ではなく、「患者さんが業者から物を買う(立て替え払い)」という扱いだからです。少し手間ですが、高額な装具代の大部分が戻ってくる大切な仕組みです。Q. 患者さん向け:どのくらいお金が戻ってくるの?A. ご自身の保険証の負担割合によります。3割負担の方: 支払った額の7割が戻ります。1割負担の方: 支払った額の9割が戻ります。※自治体独自の医療費助成(子ども医療など)がある場合、さらに手続きが必要な場合があります。Q. 医療事務向け:一番の注意点は?A. 「日付の順番」です。払い戻しの審査では、書類の日付の「ストーリー」が厳しくチェックされます。(1) 医師の指示日(意見書)↓(2) 装具の代金を支払った日(領収書)↓(3) 医師が装着を確認した日(装着証明書)この順番が逆になっていると(例:装着を確認する前に代金を支払っている)、審査で「?」と思われ、払い戻しが遅れたり、認められなかったりする原因になります。書類作成時は、この時系列が正しいか必ず確認しましょう。Q. 医療事務向け:同じ装具をまた作りたいと言われたら?A. 装具には「耐用年数」(使ってOKとされる期間)が決められています。期間内に作り直す場合は、原則として保険適用(払い戻し)の対象外です。「体が大きく変わった」「壊れてしまった」など、医師が「医学的に再作成が必要」と認めた場合に限り、その理由を詳しく意見書に書く必要があります。治療用装具療養費について(厚生労働省HP)参照