2024/10/2

お知らせ

ベースアップ評価料の算定

ベースアップ評価料の背景と目的

医療機関では、慢性的な人手不足が深刻化しています。 高齢化の進展によって社会保障費が膨らみ続ける一方で、診療報酬の大幅な引き上げは難しいという日本の医療経済の現状があります。 このような状況下で、医療機関の収益を確保しつつ、職員の給与引き上げを促すことを目的として導入されたのがベースアップ評価料です。

ベースアップ評価料の概要

ベースアップ評価料は、それで得た診療報酬の全額を対象職員(医師、歯科医師を除く主として医療に従事する職員)の賃上げに使用することを条件に算定可能な診療報酬です。

ここでいう「対象職員」とは、看護師や理学療法士などの専門職の他、看護助手や医療事務作業補助者(医療クラーク)等を指します。

 具体的には、対象となる職種の給与総額の2.3%相当が診療報酬に上乗せされる仕組みになっています。その2.3%相当額は、初診・再診患者数や入院患者数に応じてベースアップ評価料の点数が設定される仕組みとなっており、少人数のスタッフで稼働する医療機関ほど賃上げ率は高くなります。

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)【病院・診療所共通】
算定できる点数 2〜28点

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)【無床診療所のみ】
算定できる点数 1〜64点

入院ベースアップ評価料【病院・有床診療所のみ】
算定できる点数 1〜165点

無床診療所は外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)と(Ⅱ)を、病院・有床診療所は外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)と入院ベースアップ評価料を算定する形となります。

ベースアップ評価料の対象:

  • 基本給または定期的に支給される手当の引き上げ

  • 対象職種の給与を令和6年度は2.5%以上、令和7年度は4.5%以上引き上げた場合

ベースアップ評価料の対象外:

  • 定期昇給

  • 号給に変動がある昇給

ベースアップ評価料申請と注意点

ベースアップ評価料を受けるためには、施設基準の届出が必要です。 届出にあたり、医療機関は下記の準備と対応が必要となります。

申請の準備:

  • 賃上げ計画の作成

  • 職員説明会などの労使交渉

  • 計画に基づく給与規程の策定・改正

申請後の対応:

  • 賃上げ状況の報告(年度ごと)

  • 対象とならない職種のベースアップの状況に関するヒアリング

  • 抽出調査の可能性

実績報告に必要な書類:

  • 就業規則

  • 賃金規程

  • 雇用契約書

  • 賃金台帳

  • 場合によっては、対象外職員(受付・事務職員)の賃金台帳や、ベースアップ以外の昇給や賞与の状況

ベースアップ評価料の申請には、就業規則、賃金規程の見直しや、雇用契約書を最新版にするなど、労務管理の徹底が必須です。

今後の診療報酬改定と医業経営の方向性

今後の診療報酬改定は、ベースアップ評価料のように、医療機関の利益に直接的には繋がらないものの、社会的課題の解決を目的とした制度設計が中心になると予想されます。 高齢化による社会保障費は高止まりしており、医療機関は儲かっているという国の認識があるため、診療報酬改定の大幅な増加は見込めないと考えられます。

このような状況下、医療機関は以下の対応が求められます。

  • 人的資本の高い経営

  • 入りやすく辞めにくい組織づくり

  • 資金効率改善(助成金の活用)

特に人材の入れ替わりは生産性を落とす最大の原因となるため、優秀な人材の確保が必須です。

助成金の活用

人件費の上昇に対応し、資金効率を改善するため、医療機関は助成金を活用することが重要です。 ベースアップ評価料に加えて、働き方改革推進支援助成金やキャリアアップ助成金など、人材確保や待遇改善に活用できる助成金制度があります。

まとめ

ベースアップ評価料は、医療機関の収益を確保しつつ、職員の給与引き上げを促すことを目的とした制度ですが、医療機関にとっては、申請や労務管理の徹底など、対応すべき事項が多くあります。 今後の診療報酬改定では、ベースアップ評価料のように、医療機関の利益に直接的にはつながらない診療報酬項目が増加していく可能性があります。 医療機関は、ベースアップ評価料や各種助成金を活用しながら、限られた財源の中で職員の待遇改善や人材確保に取り組む必要がありそうです。

現在、医療業界は他業種と比べて、賃金水準が低いとされており、他業界への人材流出や流出に伴う医療機関の労働環境悪化が危惧されています。

ベースアップ評価料を算定しない場合、算定している医療機関に比べて、賃金水準が低くなり、ベースアップ評価料を算定している医療機関に医療従事者が流れてしまうといった現象が今後生じるかもしれません。デメリットとしては診療報酬の点数ということで患者さんへの負担が生じることです。当然説明する必要も生じます。

医療業界、そして自らのクリニックを守るためにも、ベースアップ評価料の算定を検討する必要があります。