2026/8/17
お知らせ
決定通知書が届いたら確認する3か所|9月からの標準報酬月額と、10月に来る随時改定
7月に社会保険料の算定基礎届を提出したあと、標準報酬月額の決定通知書が事業所に届きます。
ただしこの通知書は、紙で提出したか電子申請で提出したかによって、受け取り方がまったく違います。電子申請の場合は紙が届かないうえに、受け取りそのものに期限があります。
そのうえで、受け取った通知書をそのまま給与ソフトへ入れて終わりにしていないでしょうか。この時期に確認しておきたいことがいくつかあり、さらに医療機関の場合は、今年に限って10月にもう一つ手続きが控えている可能性があります。
電子申請なら紙では届きません。しかも取得に期限があります
電子申請で算定基礎届を提出した場合、決定通知書は紙で郵送されず、電子申請の公文書として返却されます。電子送付を希望している事業所についても、日本年金機構は「電子データで受け取る場合、紙の通知書の送付は行いません」と明記しています。
紙を待っていても届きませんので、e-Govやオンライン事業所年金情報サービスから自分で取りに行く必要があります。
そして見落としやすいのが、公文書には取得期限が設定されているという点です。ある事業所の実際の画面では、7月8日に発出された決定通知書の取得期限は10月6日でした。発出からおよそ90日です。期限を過ぎると取得できなくなりますので、届出をしたら公文書が返却されていないかを早めに確認してください。
返却が早いのも電子申請の特徴です。同じ事業所では、7月上旬に提出しておよそ1週間後に決定通知書が返却されていました。紙の場合、日本年金機構は発送時期を公表しておらず、提出の時期によっては通知書の発送が遅れることもある、と案内するにとどまっています。手元に届くまでの早さは、電子申請のほうが大きく勝ります。
なお決定通知書はXML形式の公文書で返却されるため、ファイルをそのまま開いても読みにくいのですが、令和8年3月18日からe-Gov電子申請に公文書表示の機能が追加され、ブラウザ上で内容を確認できるようになっています。
決定通知書を受け取ったら、まず3か所を見る
一つ目は、適用開始の年月です。定時決定で決まった標準報酬月額は、9月から翌年8月までの各月に適用されます。給与ソフトへ登録するときは、適用開始が9月になっていることを必ず確認してください。7月や8月にさかのぼって変わるものではありません。
二つ目は、等級と標準報酬月額が自社の計算と一致しているかどうかです。提出時の控えと突き合わせて、一人ずつ確認します。
三つ目は、対象者に漏れがないかどうかです。定時決定の対象は7月1日時点で使用している全被保険者です。6月1日以降に資格取得した方、6月30日より前に退職した方、7月に月額変更届を出す予定だった方などは対象外になりますので、名簿と照らして確認しておくと安心です。
確認したら、職員本人への通知が必要です
決定通知書を受け取ったあと、事業所にはもう一つやるべきことがあります。
日本年金機構から決定等の通知があった場合、事業主は、その内容を被保険者本人に通知しなければならないとされています。標準報酬月額の決定や改定も、この通知の対象です。
対象は在職中の職員だけではありません。日本年金機構は、被保険者または被保険者であった者に通知しなければならないとしており、すでに退職した方も含まれます。
通知の方法は任意とされていますが、明確かつ確実に通知することが求められています。実務では、給与明細に標準報酬月額を印字する方法が広く採られています。
ただし、毎月同じ欄に数字が載っているだけでは、9月に変わったことに本人が気づかないこともあります。改定があった月の明細に一言添えるか、決定通知書の写しを渡すほうが、通知したという事実は明確に残ります。
もう一点、給与明細への印字だけで運用していると、退職された方が漏れます。定時決定の対象は7月1日時点の被保険者ですので、7月以降に退職された方にも決定通知は出ています。その方々には給与明細が発行されませんので、別に送る必要があります。
そして見落とされがちですが、これは事業主の義務です。日本年金機構は、正当な理由なく通知しなかった場合には6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される、と案内しています。決定通知書を受け取って給与ソフトに登録しただけで終わりにせず、職員への通知まで済ませてください。
画像のように年金機構HPに被保険者用の通知が掲載されているのでリンクを張っておきます。エクセルの様式が用意されていますので、そのままお使いいただけます。

ベースアップ評価料の手当を出した医療機関は、10月改定に該当することがある
ここからが、今年の医療機関の話になります。
日本年金機構は、随時改定の対象となる固定的賃金の変動の例として、住宅手当や役付手当のような固定的な手当の追加、支給額の変更を挙げています。つまり、毎月決まって支払う手当を新しく設けたり金額を変えたりした場合は、昇給と同じように随時改定の対象になり得るということです。
ベースアップ評価料を原資とする手当も、毎月決まって支払うものであれば、この固定的賃金の変動にあたります。令和8年6月からこの手当を新設または増額した医療機関は、少なくないはずです。
随時改定は、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4か月目に改定します。ここで効いてくるのが、締め日と支払日の関係です。令和8年6月から手当を設けた場合を比べます。
給与の支払サイクル | 手当の初回支払 | 起算月 | 見る3か月 | 改定月 |
|---|---|---|---|---|
末日締め・翌月払い | 7月の給与 | 7月 | 7・8・9月 | 10月 |
当月払い | 6月の給与 | 6月 | 6・7・8月 | 9月 |
末日締め・翌月払いの医療機関であれば、いまがちょうど判定期間の最中ということになります。
改定月によって、手続きの形も変わります。7月・8月または9月の随時改定に該当する場合は、随時改定で決まった標準報酬月額が定時決定より優先されるため、算定基礎届を提出したあとであっても月額変更届を提出することになります。10月改定であれば、定時決定が9月からいったん適用され、そのうえで10月に改めて月額変更届を出す形になります。
手当を出したから自動的に該当する、ではありません
ここは必ず押さえてください。随時改定に該当するには、次の三つをすべて満たす必要があります。昇給または降給等により固定的賃金に変動があったこと、変動月以後引き続く3か月の報酬の平均額から算出した標準報酬月額が従前と2等級以上違うこと、そしてその3か月の支払基礎日数がいずれも17日以上であることです。
そのうえで、見落とされやすい留意点があります。固定的賃金が動いた向きと、等級が動いた向きが一致していなければ、随時改定の対象にはなりません。
日本年金機構は、固定的賃金は上がったが残業手当などの非固定的賃金が減ったために標準報酬月額が従前より下がり2等級以上の差が生じた場合、そしてその逆の場合について、いずれも随時改定の対象とはならないと明記しています。
手当を新設したものの、同じ時期に残業が減った、という状況は医療機関では十分に起こり得ます。手当を出したから月額変更届、と機械的に判断せず、3か月の平均が実際にどちらへ動いたかを見てから判定してください。
では、どのくらい増えれば2等級動くのでしょうか。等級の幅は報酬の水準によって変わりますが、標準報酬月額が20万円から34万円あたりの方であれば、2等級の差はおよそ4万円です。ただし、いまの報酬がその等級の幅のどのあたりにあるかによって、実際に必要な増額は2万円台まで下がることもあります。
ベースアップ評価料を原資とする手当は、1人あたり月数千円から2万円程度であることが多いと思います。そうすると、手当の新設や増額だけで2等級動くケースは、実際にはそれほど多くありません。定期昇給や役職手当の変更などと同じ時期に重なったときに、該当しやすくなります。
標準報酬月額が上がった分の法定福利費は、報告書に計上できます
ベースアップ評価料を算定している医療機関にとって、随時改定にはもう一つの意味があります。
標準報酬月額が上がれば、事業主が負担する社会保険料も増えます。この増加分は、ベースアップ評価料の賃金改善報告書に、ベア等に伴う賞与、時間外手当、法定福利費等の増加分として記載する欄が用意されています。
手当を出したことによる事業主側の負担増を、報告書のうえできちんと拾えているかどうかを確認してください。ここを空欄のままにしたり過少に入れたりすると、実際に賃金改善へ充てた額が報告書に反映されないことになります。
なお、この増加分は実額を積み上げるほかに、概算で計上することも認められています。厚生労働省の疑義解釈では、概算による場合の割合をおおむね16.5パーセントとしています。社会保険料の増加分を一件ずつ集計するのが難しい場合でも、この方法で計上できますので、空欄のままにしておく必要はありません。
職員から「10月の手取りが減った」と言われたら
標準報酬月額が上がると、毎月の社会保険料の本人負担も増えます。多くの医療機関では翌月控除を採用していますので、9月分の保険料が変わるということは、10月に支払う給与から控除額が変わるということです。
手当が増えたのに手取りがあまり増えていない、と職員の方から言われることがあります。先ほどの本人への通知は義務ですが、どうせ通知するのであれば、標準報酬月額が上がることの意味もあわせて伝えられるようにしておくとよいと思います。
標準報酬月額は、将来受け取る老齢厚生年金の額の計算に使われます。また、病気やけがで働けないときの傷病手当金、産前産後休業中の出産手当金も、標準報酬月額をもとに計算されます。標準報酬月額が上がるということは、これらの給付も増えるということです。
まとめ
決定通知書は、受け取って終わりの書類ではありません。まず電子申請で提出した事業所は、紙を待っていても届きません。公文書には取得期限がありますので、まだ取得していない場合は早めに確認してください。
そのうえで、適用が9月からになっているか、等級が自社の計算と合っているか、対象者に漏れがないかを、この時期に確認しておきましょう。確認したら、職員本人への通知まで忘れずに行ってください。通知は事業主の義務です。
そして今年は、ベースアップ評価料の手当を6月から新設・増額した医療機関にとって、随時改定の判定期間がちょうど重なっています。末日締め・翌月払いであれば10月改定です。手当を出したから自動的に該当するわけではなく、3か月の平均がどちらへ動いたかまで見て判定する必要があります。
「うちのケースは月額変更届が必要なのか」「法定福利費の増加分を報告書のどこに入れればよいのか」といったご相談がありましたら、お気軽にお声がけください。社会保険の手続きと、ベースアップ評価料の報告書作成を、あわせてサポートいたします。
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