2025/9/11
お知らせ
【新規開業クリニック必見】厚生局の「新規個別指導」とは?目的・流れ・指摘事項を徹底解説
開業された先生方にとって、日々の診療だけでなく、経営や事務手続きなど、やるべきことは多岐にわたります。その中で、多くの先生方が少し不安に感じるイベントの一つが、厚生局による「指導調査」ではないでしょうか。
特に新規開業の医療機関に実施されるのが「新規個別指導」です。これは、すべての新規開業クリニックが通る道であり、避けることはできません。
しかし、事前に準備しておけば、過度に心配する必要はありません。この記事では、新規個別指導の目的から当日の流れ、よくある指摘事項、そして万全の準備について、網羅的に解説します。

「新規個別指導」の基本
まず、個別指導が何のために行われるのかを正しく理解しておくことが重要です。
目的: 保険医療機関として、保険診療や診療報酬の請求が適正に行われているかを確認するために実施されます。
法的根拠: 健康保険法第73条や国民健康法第41条などに基づき、保険医療機関や保険医が指導を受ける義務として定められています。
対象: 新規に指定を受けたすべての保険医療機関(クリニック・病院)が対象となります。開業後、概ね半年から1年以内に行われるのが一般的です。
コロナ禍で一時休止されていた時期もありましたが、現在は通常通り実施されています。
通知から当日までの流れ
では、具体的にどのような流れで進むのでしょうか。通知が届いてから当日までのステップを確認しましょう。
Step1:実施通知(1ヵ月前)
指導日の約1ヶ月前に、日時や準備すべき資料が記載された実施通知がクリニックに送られてきます。
個別指導・新規個別指導に係る事前提出書類について(関東信越厚生局HP)
Step2:患者資料通知(1週間前)
その後、指導日の1週間前までに対象となる患者資料(診療所の場合は10名分)の詳細が通知されます。カルテの写しや検査結果などを用意する必要があります。
Step3:個別指導の当日
時間と場所: 所要時間は1〜2時間程度で、厚生局の会議室などで実施されます。
出席者: クリニックの開設者および管理者(院長)は、必ず出席しなければなりません。
内容: 持参したカルテやレセプトなどの書類に基づき、厚生局や都道府県の担当者、医師会からの立会い医師などが参加する面談形式で行われます。
注意点: もし質疑応答の中で明らかな不正や不当な請求が疑われた場合、その場で指導が中止され、より厳しい「監査」へ移行する可能性があります。
個別指導でよくある指摘事項
個別指導では、どのような点がチェックされるのでしょうか。ここでは、特に指摘されやすいポイントをまとめました。
カルテとレセプトの不一致
レセプトに記載されている傷病名や診療内容が、カルテの記載と一致していない。
カルテに記録されていない検査や処置などが請求されている
診療録(カルテ)の記載不備
傷病名、治療計画、診療の経過といったカルテの必須項目に記載漏れがある。
診療内容の記載が乏しく、「前回と同じ」といった記述だけでは無診察診療を疑われる可能性がある。
「特定疾患療養管理料」などの算定要件となる指導内容(服薬、運動、栄養指導など)がカルテに具体的に記載されていない。
検査・治療内容の問題
医学的な必要性が乏しいと思われる検査や治療が行われている。
投薬や治療の必要性が診療録に記載されていない。
システム・管理体制の不備
電子カルテのパスワードが定期的に変更されていないなど、管理が不十分である。
診療時間や勤務医の変更など、地方厚生局への変更届が未提出である。
指導結果と、その後の対応
指導の結果は、原則として1〜2ヶ月後(場合によっては2〜3ヶ月後)に通知されます。結果は主に「概ね妥当」「経過観察」「再指導」「要監査」の4つに分類されます。
指導結果の約7割は「経過観察」と言われています。この場合、指摘された事項に対する「改善報告書」の提出が必要です。また、診療報酬の返還が必要な場合は、「返還金同意書」を提出し、手続きを進めます。提出後、半年から1年間は指摘事項が改善されているかレセプトを重点的にチェックされるため、注意が必要です。
最も注意すべきは、個別指導から「監査」へと移行するケースです。「要監査」という結果が出ると、不正請求の疑いについてさらに厳しい調査が行われます。
監査の結果、悪質な不正行為が明らかになった場合、最も重い処分が「保険医療機関の指定取消」です。これは、最大で5年間、保険診療が行えなくなるという、クリニック経営の根幹を揺るがす非常に重い処分です。
「架空請求」、「二重請求」、「付増請求」、「振替請求」は取消処分の対象です。意図せずとも不正請求を指摘されないよう、管理体制には細心の注意が必要です。
まとめ:日頃からの適切なクリニック運営が最大の対策
新規個別指導は、新規開業の先生方にとっては避けて通れないプロセスです。しかし、「いつか必ずあるもの」と開業当初から意識しておくだけで、心構えは大きく変わるでしょう。
最大の対策は、日頃から適切な医療を提供し、それを正確に記録・請求することに尽きます。
スタッフ全員で意識を統一し、診療録とレセプトに相違がないよう管理を徹底する。
電子カルテシステムを有効活用し、人的ミスが起きにくく、請求内容の確認がしやすい体制を構築する。
患者さんのために良かれと思っていた薬のみの処方やリハビリ施設のある医療機関で診察しないでリハビリをしている場合は医師法20条「無診察治療等の禁止」にあたる行為であり、指導対象となります。知らないで済む話ではありません。共有することが必要です。
個別指導は、クリニックの運営体制を見直す絶好の機会です。これを前向きに捉え、より質の高い医療を提供できるクリニックを目指しましょう。
