2026/5/6
お知らせ
介護施設のBCP、「作っただけ」では実地指導で指摘されます|令和6年4月から減算リスクあり
作成日: 2026-05-06

「BCPは一応作りました。でも訓練はまだで、記録もありません」
実地指導の準備をご相談いただく介護事業所様から、こうしたお声をよく聞きます。
業務継続計画(BCP)の策定・研修・訓練は、令和3年(2021年)4月の省令改正で義務化が決定し、3年間の経過措置を経て令和6年(2024年)4月1日から完全義務化されました(訪問系・居宅介護支援等は令和7年(2025年)4月1日から)。義務化に伴い「業務継続計画未策定減算」も順次適用されています。策定しているだけでは不十分で、研修・訓練の実施と記録がなければ実地指導で指摘される可能性があります。この記事では、よくある不備と対応策を解説します。
BCPとはそもそも何か
BCPとは、感染症や自然災害が発生した際に、介護サービスを継続するための事前計画です。令和3年度の介護報酬改定に伴い、各サービスの運営基準省令に業務継続計画に関する条項が追加されたことで、全事業者に義務付けられています。
BCPには2種類あります。
感染症BCP(新型コロナウイルス等発生時を想定)と自然災害BCP(地震・台風等を想定)です。それぞれ別文書として作成するのが原則ですが、厚生労働省のFAQでは一体的な作成も認められています。
対象は訪問系・通所系・入所/居住系・居宅介護支援など全サービス種別です。「うちは小さいから関係ない」ということはありません。
研修・訓練の義務回数
BCPは策定だけでなく、研修と訓練を定期的に実施し、記録に残すことが義務です。実施頻度はサービス種別によって異なります。
入所系・施設系(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・グループホーム等)は、研修・訓練ともに年2回以上の実施が必要です。
通所系・訪問系・居宅介護支援等は、研修・訓練ともに年1回以上の実施が必要です。
感染症BCPと自然災害BCPの研修・訓練は、一体的に実施することも認められています。回数を節約したい場合は、両方を同時に扱う形で実施記録を残す方法が有効です。
実地指導でよく指摘される7つの不備
令和8年度時点で実地指導の現場において、特に多く確認される不備を整理します。
1つ目は、研修・訓練の「記録がない」ケースです。計画書は存在するものの、実施したことを証明する記録がない事業所が非常に多くあります。
2つ目は、感染症BCPまたは自然災害BCPの片方しか策定していないケースです。2種類のBCPはどちらも必須です。
3つ目は、厚生労働省のひな形を印刷しただけで、担当者名・連絡先・備蓄品リスト等が未記入のケースです。記載内容が空欄では「策定済み」とは認められません。
4つ目は、BCPの見直し・更新記録がないケースです。策定後に一度も見直していない場合、定期的な管理義務を果たしていないと判断される可能性があります。
5つ目は、ハザードマップの確認記録がないケースです。自然災害BCPでは、事業所所在地のハザードマップを確認し、その記録を残すことが求められます。
6つ目は、「研修」と「訓練」を混同しているケースです。研修は座学による知識習得、訓練はシミュレーションによる実践です。同じ記録にまとめると、それぞれの実施回数や内容が判別できなくなる恐れがあります。研修と訓練の回数・内容が明確に区別されるよう記録を整えることをお勧めします。
7つ目は、消防法上の避難訓練とBCP訓練を同じ記録で兼用しているケースです。厚労省のFAQおよび研修資料で「兼用不可」と明記されています。消防法上の避難訓練とBCP訓練は目的が異なるため、別々の記録として残す必要があります。ただし、同日にセットで実施すること自体は問題ありません。
減算リスクの深刻さ
業務継続計画未策定減算は、実地指導で発覚した時点から遡って適用される可能性があります。事実が生じた時点まで遡って減算が適用されると、過去分の介護報酬返還につながります。これは事業所の経営に直接影響する重大なリスクです。
「作ってあるから大丈夫」ではなく、「作って、実施して、記録している」状態を維持することが重要です。
記録として残すべき内容
研修・訓練の記録には、少なくとも以下の内容を含めることが求められます。
実施日時、参加者の氏名と職種、実施した内容、振り返りと課題、改善事項の4点が基本です。参加者のサインまたは押印があると、より信頼性の高い記録になります。
ひな形・ガイドラインの入手先
厚生労働省のウェブサイトに「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修資料・動画」が公開されています。感染症ガイドライン・ひな形(入所系/通所系/訪問系)と自然災害ガイドライン・ひな形を無料でダウンロードできます。
既にひな形を印刷している場合は、空欄を埋め、最終更新日を記載した上で保管してください。
まとめ
介護施設・事業所のBCP義務化は、施設系等は令和6年4月、訪問系・居宅介護支援等は令和7年4月に経過措置が終了し、現在は全サービスで未策定・未実施に対する減算が適用されています。実地指導での指摘を避けるために、策定だけでなく研修・訓練の実施記録を今すぐご確認ください。
「うちの施設はどこから手をつければよいか」「記録の整備を一緒にやってほしい」という場合は、お気軽にご相談ください。
山一社労士事務所
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