2026/3/9

お知らせ

10人未満の会社が就業規則を作成したほうがよい理由  

労働基準法上、常時10人未満の労働者を雇用する事業場には就業規則の作成義務はありません。しかし、日々の労務トラブルに対応している社労士の視点からも、規模を問わず作成することを強くお勧めします。

会社を守る

いざ労働問題(退職トラブルや問題社員への対応など)に直面した際、会社側に大きな損害が発生する可能性があります。就業規則という明確なルール(土台)を固めることで、無用なトラブルから会社を守ることができます。

従業員を守る

「職場でのルールを定め、労働者と会社側の双方が守ることで労働者が安心して働くことができる」と記載されている通りです。労働条件や服務規律が明確になることで、従業員は自分の権利と義務を理解し、不当な扱いを受けるリスクが減ります。

社会的信用

「自社は労働基準法を守っていますよと従業員にアピールすると同時に、他社や求職者、従業員から見た会社の信頼性においても重要なもの」とあります。ルールが明文化されている会社は、コンプライアンス意識が高いと評価されます。

助成金の申請に必要

厚生労働省管轄の雇用関係助成金(キャリアアップ助成金など)を申請する際、法定要件を満たした就業規則の提出が必須となるケースがほとんどです。10人未満であっても、国の支援を活用して会社を成長させるためには、就業規則の作成が実務上の前提条件となります。

10人未満の会社の就業規則の作成義務

従業員が10人未満の会社には、労働基準法第89条に基づく就業規則の「作成・届出の義務」はありません。 しかし、10人未満の会社でも就業規則を作成し、従業員に周知されていれば就業規則の効力は発生します。事業所所轄の労働基準監督署に届出た場合は受理されます。任意で作成し、労基署へ届け出ることは全く問題ありません。作成した以上は、会社も従業員もそのルールに拘束されることになります。

就業規則とは?

就業規則とは、労働基準法などの「労働法」に基づいて、会社の労働条件(賃金や労働時間など)や服務規律(働く上でのルール)について、会社ごとに定める規則のことです。 「労働者と会社間の無用なトラブルを防ぐことができるため、就業規則の役割は非常に重要なもの」とされている通り、職場の憲法のような役割を果たします。

就業規則の根拠法令

就業規則は、従業員に対して一方的に不利な条件を押し付けることを防ぐため、法令に則していなければなりません。

  • 作成義務の要件: 「常時10人以上の従業員」を雇用する場合、作成と労基署への届出が義務です(労働基準法第89条)。この10人には、正社員だけでなく、パートやアルバイトなど雇用形態に関係なく「常態として雇用している労働者」が含まれます。

  • 効力の優先順位: 「法令 → 労働協約 → 就業規則 → 労働契約」の順で優先されます。例えば、就業規則の基準を下回る個人的な労働契約を結んでも、その部分は無効となり、就業規則の基準が適用されます(労働基準法第93条、労働契約法第12条)。また、就業規則自体が法令違反である場合、その違反部分は無効となります。

就業規則の効力発生日

よく誤解されますが、就業規則は「作成した日」や「労基署に届け出た日」から効力が発生するわけではありません。 最重要要件として『従業員に周知する』ことが必要であり、「従業員に周知した時点」から効力が発生します。つまり、従業員がそのルールを知り得る状態に置かれていなければ、会社が「就業規則に違反した」と従業員を罰することはできません(労働契約法第7条)。

周知義務違反

就業規則を作って金庫にしまっておくようなケースです。 周知義務を怠った場合、就業規則の効力が発生しないだけでなく、労働基準監督署からの指導・勧告の対象となります。さらに、悪質と認められた場合は労働基準法第106条(法令等の周知義務)違反として、「30万円以下の罰金」が科される可能性もあります。

周知とは?

「周知」とは、従業員が就業規則の内容をいつでも確認できる状態にしておくことです。法令上、主に以下の3つの方法が認められています。

  1. 確認できる場所に掲示: 社内の見やすい場所に掲示する、または休憩室などに冊子を備え付ける方法です。(複数事業所がある場合は改定版の管理に注意が必要です)。

  2. 書面で交付: 従業員1人ひとりに印刷して配布する方法です。(確実ですが、印刷コストや改定時の再配布の手間がかかります)。

  3. データで共有: 社内サーバーやグループウェアなどで電子データを共有し、職場のパソコン等から常時確認できるようにする方法です。(データの一元管理ができ、改定も容易なため、現在最も一般的な方法です)。

まとめ

就業規則は、厚生労働省のテンプレートを使えば会社自身で作成することも可能です。しかし、法令の正しい知識を持たずに自社に合わない内容のまま作成・周知してしまうと、後々労働問題が起きた際に「会社の首を絞める」ことになりかねません。

会社の就業規則が整っていない、または従業員に十分に伝わっていない状態で事業を行うことは、運転のルールを知らない、あるいは軽視して車を運転する「無免許運転」のような危険な行為だと言えます。、就業規則は会社と従業員の未来を守るための重要な「土台」です。専門的な知見を踏まえ、自社の実態に即した就業規則を整備し、正しく運用(周知)することが不可欠です。