2026/4/21
お知らせ
人材確保等支援助成金(雇用管理制度コース)──最大80万円を受け取るために、今から知っておくべきこと
「採用してもすぐ辞めてしまう。何か使える助成金はないですか?」
そんなご相談を病院・クリニック・介護施設の院長・施設長・事務長の方からよくいただきます。
採用コストが高騰するいま、人材の定着こそが経営の最重要課題のひとつです。今回ご紹介する人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)は、職場環境の整備と離職率低下の取り組みを助成する制度です。うまく活用できれば最大80万円(または機器導入の場合は最大150万円)の支給を受けることができますが、申請タイミングや手続きの落とし穴が多く、準備なしに動くと「気づいたら申請できなかった」という結果になりかねません。この記事では、制度の概要から医療・介護施設特有の注意点まで、実務目線でわかりやすく解説します。
そもそもこの助成金とは?
人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)は、事業主の雇用管理改善を支援する国の制度です。
事業主が雇用管理制度の導入または業務負担軽減機器等の導入により雇用管理を改善し、離職率の低下に取り組む場合に助成されます。「魅力ある職場づくり」を通じた人材の確保・定着が政策目的であり、厚生労働省が推進しています。
根拠法令は雇用保険法第62条(雇用安定事業)および雇用保険法施行規則第118条です。
支給額はいくら?
支給額はA群とB群の2つに分かれています。
A群(雇用管理制度の導入)
1制度あたり40万円または20万円、複数導入時の上限は80万円
賃金要件を達成した場合は1制度あたり50万円または25万円、上限100万円に増額
対象となる「雇用管理制度」には、評価・処遇制度、研修制度、健康づくり制度、メンター制度、短時間正社員制度などが含まれます。
B群(業務負担軽減機器等の導入)
対象経費の1/2、上限150万円
賃金要件を達成した場合は対象経費の約62.5%、上限187.5万円に増額
介護ロボットや見守りシステムなど、スタッフの業務負担を軽減する機器の導入費用が対象になります。
受給するために必要な要件
支給を受けるには以下の要件をすべて満たす必要があります。
事業主の基本要件
雇用保険の適用事業の事業主であること
計画の提出・認定
計画開始日の6か月前〜1か月前の前日までに、整備計画を労働局に提出し、認定を受けること
この「1か月前の前日」という期限は非常に厳格です。計画開始日の1か月前を1日でも過ぎると申請できなくなります。
制度の適用対象
通常の労働者(正規雇用・雇用保険一般被保険者)の全員に制度を適用すること
「一部の職員だけに試験的に導入した」ではNGです。
継続運用
評価時離職率算定期間末日まで制度を継続運用すること
離職率低下目標の達成
雇用保険一般被保険者数が9人以下の事業所:評価時離職率が計画時を上回らないこと
雇用保険一般被保険者数が10人以上の事業所:評価時離職率が1ポイント以上低下すること
いずれの場合も評価時離職率が30%以下であること
※離職率の計算母数は「雇用保険一般被保険者数」です。週20時間未満など雇用保険に加入していないパートは含まれません。
解雇ゼロ
計画期間中に事業主都合の解雇をゼロに抑えること
「勧奨退職」など実質的に会社側が退職を促した場合も対象となる可能性があります。個別の判断は労働局への確認が必須です。
申請の流れ──最短でも計画提出から支給まで約2年以上
この助成金は、申請から受給まで非常に長い道のりがあります。概要は以下のとおりです。
整備計画書の作成
労働局へ計画認定申請(計画開始日の6か月前〜1か月前の前日までに)
計画期間内(最大12か月)に制度を導入
評価時離職率算定期間(12か月)
評価期間終了後2か月以内に支給申請
つまり、今日から動き始めたとしても、受給できるのは早くて約2年後です。だからこそ、「いつかやろう」ではなく早期に動き出すことが重要です。
医療・介護施設が特に注意すべきポイント
一般企業と比較して、医療・介護施設には固有の注意点があります。
1. 雇用管理責任者の選任・掲示・周知が要件
介護事業所ごとに雇用管理責任者を選任し、事業所内への掲示および職員への周知を行うことが要件になっています。担当者の名前を壁に貼るだけでなく、全職員が「誰が雇用管理責任者か」を認識していなければなりません。
2. 離職率30%超は問答無用で不支給
離職率が30%を超えると、目標達成の有無にかかわらず支給されません。介護業界は慢性的に離職率が高い傾向がありますが、そもそも30%を超えている事業所は、まず離職率改善の取り組みを先に進める必要があります。
3. 他の助成金との併給調整
複数の助成金を活用している場合、人材確保等支援助成金との間で併給調整がかかる可能性があります。特に、キャリアアップ助成金や特定求職者雇用開発助成金を同時活用している場合は、事前に労働局へ確認することが不可欠です。
4. 正規雇用者数の正確なカウント
「通常の労働者(雇用保険一般被保険者)」が何人いるかを事前に精確にカウントすることが必要です。パート・アルバイト・契約社員の取り扱い、週所定労働時間による判断など、実務上ミスが生じやすい部分です。
よくある申請ミスと対処法
実際の申請でミスが多いポイントを整理しました。
よくあるミス | 対処法 |
|---|---|
計画提出のタイミング誤り(1か月前の前日を過ぎると不可) | 計画開始日から逆算してカレンダーに締切を設定する |
計画認定前に発注・支払い済みの経費は対象外 | 必ず認定通知書を受け取ってから発注する |
通常の労働者の一部に制度を未適用(全額不支給) | 適用対象者リストを事前に確定し、全員への周知記録を残す |
就業規則変更の労基署届出漏れ(10人以上の場合) | 就業規則変更と同時に届出スケジュールを組む |
支給申請期限(評価期間終了後2か月以内)の超過 | 評価期間終了日をカレンダーに入れ、2か月前から準備を開始する |
まとめ
助成金はあくまでも企業の体制を強固なものにするためのツールです。
人材確保等支援助成金(雇用管理制度コース)は、正しく活用すれば最大80万円の支給を受けながら職場環境の整備を進めることができます。しかし、計画提出から支給まで約2年以上かかること、計画認定のタイミングや「全員適用」「離職率30%以下」などの要件が厳格であることから、準備と段取りが成否の鍵を握っています。
「うちの事業所は対象になるのか」「どの制度から導入するのが有利か」という入口の段階から、ぜひ一度ご相談ください。初回のヒアリング・お見積もりは無料です。
山一社労士事務所
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