2026/3/31

お知らせ

令和8年度診療報酬改定で新しく導入された「救急患者応需係数」って何?

はじめに

令和8年度(2026年度)の診療報酬改定において、入院料の施設基準の肝である重症度、医療・看護必要度の算出で新たに「救急患者応需係数」という文言がされました。

この係数が導入された背景には、日夜を問わず行われている救急搬送の受け入れ努力を、入院料の施設基準のベースとなる重症度、医療・看護必要度の評価へ適切に反映させるという明確な趣旨があります。具体的には、急性期医療を担う病棟において、救急搬送の受け入れ実績を「重症度、医療・看護必要度」の評価に反映させるために新設された係数です。これにより、救急搬送を多く受け入れている病棟がより高く評価される仕組みとなっています。

1. 新設された「救急患者応需係数」とは?

「救急患者応需係数」とは、急性期医療を担う病棟において、救急搬送の受け入れ実績を「重症度、医療・看護必要度」の評価に反映させるために新設された係数です 。

病棟における重症度、医療・看護必要度の「該当患者割合」に、この「救急患者応需係数」を加算した数値を「基準患者割合に係る指数(割合指数)」として算出します 。そして、この割合指数を用いて、施設基準を満たしているかの判定に用います 。これにより、救急搬送を多く受け入れている病棟がより高く評価される仕組みとなっています 。

2. 係数の算出対象となる病棟

「救急患者応需係数」の算出対象となるのは、「重症度、医療・看護必要度」の該当患者割合に当該係数を足し合わせた「割合指数」を用いて施設基準の評価が行われる病棟です 。具体的には、以下の入院基本料や加算を算定する病棟が対象となります 。

  • 急性期病院一般入院基本料(急性期病院A一般入院料、急性期病院B一般入院料)

  • 急性期一般入院基本料の1〜5(※急性期一般入院料6は除く)

  • 特定機能病院入院基本料(一般病棟に限る)の7対1入院基本料

  • 急性期総合体制加算を算定する病棟

  • 看護・多職種協働加算を算定する病棟

  • 地域包括医療病棟入院料

3. 救急患者応需係数の計算4ステップ

救急患者応需係数は、「病床当たりの年間救急搬送受入件数」に0.005を乗じて算出されます 。具体的な手順は以下の通りです。

  • ステップ1(全体件数の把握):直近1年間における、救急用の自動車又は救急医療用ヘリコプターによる病院全体の搬送受入件数(全救急搬送受入件数)を把握します 。

  • ステップ2(病棟ごとの受入件数の按分):病院内に応需係数の計算対象となる病棟が複数ある場合は、全救急搬送受入件数を、各対象病棟へ実際に入院した救急搬送患者数の比率に応じて按分します 。これらの対象病棟が1つの病院内に複数種類ある場合は、病院全体での「全救急搬送受入件数」を、救急搬送によってそれぞれの対象病棟に入院した患者数の比率に応じて按分します 。

  • ステップ3(病床当たりの件数算出):按分して求められた「当該病棟の救急搬送受入件数」を、「当該病棟の病床数」で割り、病床1床当たりの年間救急搬送受入件数を算出します 。按分後、各病棟の病床数等を用いて病棟ごとの「救急患者応需係数」を算出する仕組みとなっています 。

  • ステップ4(係数の算出):ステップ3で求めた数に0.005を掛けた数値が「救急患者応需係数」となります 。

  • 【重要】上限値について:なお、救急患者応需係数の上限は「1割(0.1)」と定められています 。


4. 救急患者応需係数の計算シミュレーション

ここでは、現場で担当者が迷いやすい「複数病棟が存在するケース」を想定して、具体的な数字を用いたシミュレーションを解説します。

パターンA:対象病棟が複数ある場合(「急性期病院A一般入院料」+「地域包括医療病棟」)

「急性期病院一般入院基本料(急性期病院A一般入院料)」と「地域包括医療病棟入院料を算定する病棟」は、どちらも係数の算出対象です 。

<病院の前提条件>

  • 病院全体の全救急搬送受入件数:2,000件

  • 病棟①:急性期病院A一般入院料(150床) / 救急搬送からの実際の入院患者数:800人

  • 病棟②:地域包括医療病棟(50床) / 救急搬送からの実際の入院患者数:200人

<計算手順>

  1. 対象病棟への入院患者比率を出します(ステップ2)。病棟①(800人)と病棟②(200人)の比率は「4:1」になります。

  2. 病院全体の救急受入件数を比率で按分します(ステップ2)。病棟①の受入件数は1,600件、病棟②の受入件数は400件となります。

  3. 病床1床当たりの受入件数を算出します(ステップ3)。病棟①は約10.66件/床、病棟②は8件/床となります。

  4. 応需係数を算出します(ステップ4)。それぞれ0.005を掛けると、病棟①は約0.053、病棟②は0.040となります。どちらも上限の0.1(1割)には達していないため 、この数値がそのまま係数となります。

パターンB:対象外の病棟が混ざっている場合(「急性期病院A一般入院料」+「地域包括ケア病棟」)

次に、病院内に「係数の計算対象となる病棟」と「対象にならない病棟」が混在しているケースを見てみましょう。

<病院の前提条件>

  • 病院全体の全救急搬送受入件数:2,000件

  • 病棟①:急性期病院A一般入院料(150床) / 救急搬送からの実際の入院患者数:800人

  • 病棟②:地域包括ケア病棟(50床) / 救急搬送からの実際の入院患者数:200人

<計算手順と注意点> 大前提として、地域包括ケア病棟は今回の対象病棟一覧には含まれていません 。ルールの原則として、病院全体の全救急搬送受入件数を按分するのは「病院内に応需係数の計算対象となる病棟が複数ある場合」のみです 。したがって、このケースの対象病棟は「病棟①」のみとなります。

  1. 応需係数の計算対象となる病棟は1つのみのため按分は発生せず、病院全体の全救急搬送受入件数(2,000件)をそのまま病棟①の計算に用います 。

  2. 病床1床当たりの受入件数を算出します(ステップ3)。2,000件 ÷ 150床 = 約13.33件/床となります。

  3. 応需係数を算出します(ステップ4)。13.33 × 0.005 = 約0.066となります。上限の0.1には達していないため 、この数値が病棟①の係数となります。対象外である病棟②の算出は行いません。

まとめ

救急車を積極的に受け入れていく医療機関にとっては恩恵を受けることになります。

救急患者応需係数の導入により、正確な救急搬送件数の把握と、複数病棟間の適切な按分計算が施設基準の維持において極めて重要になります。

急性期病院入院料と地域包括医療病棟入院料を併設している医療機関は、パターンAのように按分する必要があるため、救急応需係数は低くなる傾向にあります。地域医療構想を見据えた医療機関の役割というものをハッキリさせろと言う厚労省のメッセージのあらわれかと思われます。