2026/6/22

お知らせ

2026年10月から変わる社会保険の加入ルール|「月収不問」で週20時間以上が対象に

令和8年(2026年)10月から、社会保険の加入要件が大きく変わります。これまで加入の条件の一つだった「月額賃金8.8万円以上」という基準が廃止されます。つまり、月収がいくらであっても、週20時間以上働いているパート・アルバイト従業員は、社会保険の加入対象になります(週20時間以上という労働時間の条件は引き続き残ります)。今から確認と準備を進めておきましょう。


これまでの加入要件とは

社会保険(健康保険・厚生年金)に加入するためには、通常の「週30時間以上」という基準とは別に、パート・アルバイトなどの短時間労働者向けの特別な基準があります(健康保険法第3条第1項第9号・厚生年金保険法第12条第5号)

従業員51人以上の企業では、以下の5つの要件をすべて満たす短時間労働者が社会保険の加入対象となっています。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上

  2. 月額賃金が8.8万円以上(年収106万円相当)

  3. 雇用期間が2ヶ月を超える見込みがある

  4. 学生でない

  5. 従業員51人以上の企業に勤務している

この5つがすべて揃って初めて加入対象となるため、「週20時間以上働いていても月収が低ければ対象外」という状況が生まれていました。


令和8年10月から何が変わるのか

令和8年(2026年)10月1日から、上記2の「月額賃金8.8万円以上」という要件が廃止されます。

改正後の加入要件は次のとおりです。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上

  2. 雇用期間が2ヶ月を超える見込みがある

  3. 学生でない

  4. 従業員51人以上の企業に勤務している

月収の多い少ないに関係なく、週20時間以上働いていれば加入対象になります。「106万円の壁」と呼ばれていた賃金要件がなくなることで、これまで対象外だった低賃金の短時間労働者が新たに社会保険へ加入することになります。


実は、8.8万円要件はすでに「ほぼ意味をなしていない」

ここで少し立ち止まって考えてみましょう。

週20時間勤務の場合、1ヶ月の労働時間はおよそ86〜87時間です(20時間×52週÷12ヶ月)。この時間数で月額8.8万円を下回るには、時給が約1,015円未満である必要があります。

ところが、令和7年度(2025年度)の最低賃金改定により、最も低い地域でも時給1,023円となりました(各都道府県で令和7年10月から令和8年3月にかけて順次発効)。最も低い地域であってもすでに1,015円を超えています。

つまり、最低賃金近辺で週20時間以上働く方は、改定後の賃金で計算すると「月収8.8万円以上」という要件をほぼ必然的に満たすことになります。

これは、令和8年10月の正式な要件廃止を待たずとも、最低賃金の上昇によってすでに加入対象に該当している方が出ている可能性があることを意味します。現時点の賃金をもとに、加入状況を改めて確認することをお勧めします。


従業員50人以下の事業所はどうなるのか

ここまで説明した「週20時間以上」という基準は、従業員51人以上の特定適用事業所だけに適用されるルールです。従業員50人以下の事業所は、令和8年10月時点ではこの特例の対象外であり、原則どおり「4分の3基準」だけで加入の要否を判断します。

つまり、50人以下の事業所では、週20時間以上働いているパートでも、4分の3基準(通常の労働者の所定労働時間および所定労働日数の4分の3以上、多くの企業で概ね週30時間以上)を満たさなければ、社会保険の加入義務はありません。

ただし、次の2点に注意が必要です。

  1. 任意で特定適用事業所になることができる

従業員50人以下でも、働く人の2分の1以上の同意など所定の労使合意を得たうえで事業主が申し出を行えば、自ら特定適用事業所になることができます。この場合は週20時間基準が適用され、週20時間以上のパートも加入対象になります。「うちは50人以下だから関係ない」と言い切れないのは、この任意加入の制度があるためです。

  1. 令和9年10月以降は対象になる可能性がある

企業規模要件は段階的に引き下げられ、令和9年(2027年)10月に36人以上、令和11年(2029年)10月に21人以上、令和14年(2032年)10月に11人以上、そして令和17年(2035年)10月には全企業が対象となる予定です。現在50人前後の事業所は、令和9年10月から新たに週20時間基準の対象になる可能性があります。今は4分の3基準だけで済んでいても、数年後に判断基準が変わる点は押さえておきましょう。


「週20時間未満に抑えれば加入を免れる」のは本当か

保険料負担を避けるために「いっそ週20時間未満に契約し直せばよいのでは」と考える事業主は少なくありません。理論上、週の所定労働時間が20時間未満であれば短時間労働者の加入要件(健康保険法第3条第9項)を満たさないため、加入は不要になります。ただし、実務では次の2つの落とし穴があります。

判断基準は「雇用契約書の所定労働時間」だが、実態が常態化すれば加入義務が生じる

まず大前提として、「週20時間以上」を満たすかどうかは、就業規則や雇用契約書で定めた所定労働時間で判断します。実際の労働時間ではありません。

そのため、一時的に時間が増減しても、すぐに資格の得喪が起こるわけではありません。たとえば所定労働時間20時間以上で加入している人が、ときどき20時間未満の週があっても、すぐに資格を失うわけではありません。逆に、所定労働時間20時間未満で未加入の人が、繁忙期に一時的に20時間を超えた程度であれば加入対象にはなりません。

ただし、このルールを逆手に取り、「実態は20時間以上だが、加入させないために契約書上は20時間未満にする」という方法は認められません。日本年金機構・政府広報オンラインの取扱いでは、週の所定労働時間が20時間に満たない場合でも、実労働時間が2ヶ月連続で週20時間以上となり、引き続き20時間以上が見込まれるときは、3ヶ月目から社会保険に加入するとされています。20時間以上の勤務が常態化していれば、契約書上の数字にかかわらず加入対象になります。これは年金事務所の調査で最も指摘されやすい論点です。

人手と定着への影響が大きい

医療・介護の現場で1人あたりの時間を20時間未満に抑えると、必要なシフトを組むために頭数が増え、かえって採用・教育コストが膨らむことがあります。また、将来の年金や傷病手当金・出産手当金を理由に、従業員本人が加入を望むケースもあります。

結論として、「20時間未満に抑える」よりも、加入を前提に保険料負担を織り込んだ給与・シフト設計へ切り替えるほうが、長期的にはトラブルが少ない場合が多いです。ただし最適解は職員の希望や経営体力によって変わるため、人数と負担額のシミュレーションが前提になります。


令和8年10月に向けて今やること

対応が必要な事業所は、以下の手順で確認を進めてください。

  1. 週20時間以上働いているパート・アルバイトの一覧を作成する

  2. その中で月収8.8万円未満のスタッフを洗い出す(賞与・残業代・通勤手当などを除いた所定内賃金で判定します)

  3. 雇用契約書の内容(週所定労働時間・雇用期間)を確認する

  4. 新たに加入対象となるスタッフの人数と保険料負担額を試算する

  5. 必要に応じて給与システムの設定変更・雇用契約書の更新を行う

  6. 令和8年10月1日付で資格取得届を提出する

特に「週20時間ちょうど」のスタッフについては、実態の労働時間と契約書の記載が一致しているかを改めて確認することをお勧めします。


まとめ

令和8年(2026年)10月から、パート・アルバイトの社会保険加入要件のうち「月額8.8万円以上」という賃金要件が廃止されます。週20時間以上働いている従業員は、月収に関係なく加入対象となります(従業員51人以上の事業所が対象)。

企業規模要件は今後も段階的に拡大され、令和17年(2035年)には全企業が対象となる予定です。

「うちの事業所は何人が新たに加入対象になるのか」「保険料の負担増はどのくらいになるか」など、個別のご相談はお気軽にお問い合わせください。


参考・出典

短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構


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