2026/9/8

お知らせ

電子カルテでつくる「診療記録の保管・管理のための規程」【6つの施設基準と個別指導で求められます】

参照:

厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版(令和8年6月)」 ※ページ下部の参考資料に「運用管理規程文例」(PDF)があります

関東信越厚生局「個別指導・新規個別指導に係る事前提出書類について」

東海北陸厚生局「個別指導及び適時調査において保険医療機関等に改善を求めた主な指摘事項について」

内部リンク (厚生局の「新規個別指導」とは?


電子カルテで診療している医療機関に、必ず一度は求められる文書があります。診療記録の保管・管理について定めた規程です。

インターネットで探すと、ひな形はいくつも見つかります。ただ、そのほとんどが紙カルテの時代に作られたものです。施錠可能な書庫、カルテ棚の鍵の管理、年に一度の廃棄。並んでいる条を読んでいくと、自院の実態とどんどんずれていきます。実際のカルテは、サーバーの中にあるからです。

書いてあることと運用が違う規程は、無いよりも不利になります。指導や調査で見られるのは、規程があるかどうかだけではないからです。

電子カルテ前提で、どう書けばよいのか。求められる場面から順に整理します。


電子カルテの医療機関は、二度この規程を求められます

一度目は施設基準の届出、二度目は厚生局の個別指導です。性格の違う二つの場面ですが、聞かれていることは重なります。

一度目:施設基準の届出

施設基準の通知に、こういう一文があります。

「診療記録の保管・管理のための規定が明文化されていること。」

読み飛ばしそうになりますが、ここは「体制が整っていること」ではありません。「規定が明文化されていること」です。求められているのは文書の現物です。電子カルテがあることでも、実際にきちんと保管していることでもなく、そう書いた文書が院内にあるかどうかを問われています。

しかもこの一文は、ひとつの施設基準の話ではありません。

施設基準

どちらの通知にあるか

診療録管理体制加算1・2

基本診療料の施設基準等

外来データ提出加算

基本診療料の施設基準等

在宅データ提出加算

特掲診療料の施設基準等

リハビリテーションデータ提出加算

特掲診療料の施設基準等

充実管理加算(生活習慣病管理料の注4)

特掲診療料の施設基準等

地域包括診療料

特掲診療料の施設基準等

規程は1本作れば、これら全部に効きます。将来どれを取るか決まっていなくても、先に作っておいて損はありません。

二度目:個別指導の事前提出書類

関東信越厚生局が個別指導・新規個別指導の事前提出書類としている「保険医療機関の現況」には、次の但し書きがあります。

「※ 電子カルテにより診療を行っている場合は、上記『保険医療機関の概要<様式1>』の該当箇所の記載に合わせて『電子カルテの運用管理規程』等の添付をお願いします。」

様式1の「電子カルテの導入」欄を「有」にすると、その下に記入欄が続きます。操作機器の台数、システムベンダー、運用管理規程(定めていない/定めている・制定年月日)、アクセス権限、ID付与、パスワード管理、追記・書換・削除、記録の確定処理、データの保存。

制定年月日を書かせたうえで、規程そのものを添付させる。指導の当日に取り繕えるものではありません。

根拠は平成17年3月31日の通知(医政発第0331009号ほか)です。診療録を電子媒体で保存する場合の留意事項として、こう定めています。

「施設の管理者は、運用管理規程を定め、これに従い実施すること。」

そして新規に指定を受けた医療機関は、おおむね1年以内に新規個別指導を受けます。電子カルテで開業したのであれば、ここは必ず通る道です。


何を書けばよいのか

書けと言われても、何を書けば足りるのかが分からない。ここで多くの方が困ります。

この点には、公式の回答があります。平成26年3月31日の疑義解釈(その1)問35です。

「『診療記録の保管・管理のための規定が明文化』とあるが,具体的にどのような内容になるのか,ひな形等はあるのか。」

これに対する答えは、こうです。

「ひな形等は定めていない。通知の要件を満たしていればよい。」

書きぶりや条数は自由で、通知が求めている事柄が押さえられていればよい、という組み立てになっています。

規程に書くのは、保管・管理そのものです。目的、対象となる診療記録の定義、管理責任者、保管の場所と媒体、保管期間、アクセス権限と持ち出し、開示請求への対応、廃棄の手順、個人情報の取扱い。この範囲で足ります。


厚生労働省が文例を公開しています

ゼロから起案する必要はありません。

厚生労働省は「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を公開していて、最新版は第7.0版(令和8年6月)です。このページの参考資料に、運用管理規程文例というPDFが置かれています。17ページの表形式で、管理項目ごとに、そのまま条文に使える文案が並んでいます。

よくできているのは、A(医療機関の規模を問わない)、B(大・中規模病院)、C(小規模病院、診療所)と対象を書き分けている点です。たとえば管理体制の条であれば、病院向けには運用責任者・個人情報保護責任者・システム管理者を分けて置き、委員会を設ける文案が、診療所向けには院長が全部を兼ねる文案が、それぞれ用意されています。自院の規模に合うほうを選べます。

ただし、この文例には保管期間の定めがありません。診療録を何年保管するか、という条がどこにもないのです。目的が情報システムの安全管理にあるためで、文例としての欠点ではありません。診療記録の保管・管理という切り口では、そこだけが足りません。

つまり、この文例を土台にして、保管期間と廃棄の条を足す。それでこの規程は形になります。すでに電子診療録の運用管理規程をお持ちなら、多くはこの文例をもとに作られていますので、見比べながら足りない条を足していくのがいちばん早い方法です。


電子カルテ版で書き方が変わるところ

ここからが本題です。紙カルテ前提のひな形をそのまま使うと合わなくなるのは、次の条です。

紙カルテ前提の書き方

電子カルテ版で書くこと

保管の場所及び媒体

施錠可能な書庫に保管する

電子カルテシステム内に保管する。紙で受領したものはシステムに取り込む

保管期間

保管期間の経過後に廃棄する

期間の経過後も継続して保管する

アクセス、持出し

カルテの院外持ち出しを禁止する

アクセス権限を職種・業務に応じて設定する。外部記録媒体への書き出しを制限する

廃棄

年1回、保管期間を経過したものを廃棄する

廃棄する場合の手順を定める(廃棄しない運用も想定する)

安全管理

鍵の管理、保管場所の施錠

電子保存の3基準、記録の確定と代行入力、識別認証、バックアップ、監査を条として置く

保管期間を「5年で廃棄」と書かない

診療録の法定保存期間は完結の日から5年、その他の診療記録は3年です。紙のひな形は、この期間を書いて、経過したら廃棄する、と続きます。

電子カルテでは、これをそのまま書くと運用と食い違います。容量の制約が小さいため、実際には消していない医療機関がほとんどだからです。5年で廃棄すると書いてあるのに廃棄の記録が一件もない、という状態は、規程と運用の不一致そのものです。

当方のサンプルは、こう書いています。

「2 電子媒体において保管する診療記録については、前項に定める期間の経過後も、半永久的に継続して保管する。」

法定期間を下回らないことを第1項で押さえたうえで、電子媒体は消さない、と第2項で言い切る形です。

廃棄の条は条件付きにする

同じ理由で、廃棄の条も「廃棄する場合は」から始めます。

そして廃棄の記録を残す条には、ただし書きを置きます。

「廃棄を行わない場合は、この限りでない。」

これが無いと、廃棄記録が存在しないこと自体が規程違反になります。紙のひな形をそのまま流用したときに、いちばん起こりやすい事故です。

指摘事項を、そのまま条文にしておく

厚生局は、規程があるかどうかだけを見ているわけではありません。中身まで指摘しています。東海北陸厚生局の令和6年度分から、電子的に保存している記録の管理・運用に関する部分です。

指摘事項(原文)

運用管理規程を定めていない。

代行入力を認める業務及び代行が許可される依頼者と実施者について運用管理規程に定めていない。

スキャナ等による読み取りに係る運用管理規程の内容を定めていない。

「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0 版」に準拠していない。

特定のIDを複数の職員が使用している。

職員に対し個人情報の安全管理に関する教育訓練を定期的に行っていない。

※ガイドラインの版は資料の年度によるものです。現在の最新版は第7.0版です。

九州厚生局の指摘事項でも、アクセス権限の設定、記録の確定に関する取扱い、監査体制、システムダウン時の対応について、いずれも運用管理規程に規定するよう求めています。

裏返せば、これらを先に条文にしておけば指摘されません。当方のサンプルは、次のように条を立てています。

指摘されている事項

対応する条

運用管理規程を定めていない

第1条第2項(この規程が運用管理規程を兼ねる旨を明記)

代行入力の業務・依頼者・実施者

第7条第2項と別表

スキャナ等による読み取り

第8条

ガイドラインに準拠していない

第5条第3項、第6条(真正性・見読性・保存性)

特定のIDを複数の職員が使用

第9条第2項(IDは利用者ごとに個別に付与)

教育訓練を定期的に行っていない

第16条第2項(年1回以上の研修と記録)

監査を実施したことが確認できない

第12条(年1回以上の内部監査と記録)

システムダウンに関する規定がない

第11条第3項(連絡体制・復旧手順・診療の継続方法)

ここで、規程を1本にまとめておくことをおすすめします。施設基準の届出に添付するのも、個別指導に添付するのも、同じ1本で足ります。第1条に、この規程が電子カルテシステムの運用管理に関する規程を兼ねる、と書いておけばよいだけです。

ただし、書いただけでは足りません。監査と研修は、実施した記録を残してください。指摘事項に「監査を実施したことが確認できない」が挙がっているとおり、確認されるのは記録のほうです。


サンプル規程

上の組み立てで作った、電子カルテ前提のサンプルです。冒頭の3か条を掲載します。

診療記録管理規程(サンプル)

第1条(目的) 1 この規程は、○○(以下「当院」という。)における診療記録の保管及び管理に関し必要な事項を定め、診療記録の適正な保存及び利用を図ることを目的とする。 2 この規程は、当院の電子カルテシステムの運用管理に関する規程を兼ねる。

第2条(定義及び適用範囲) 1 この規程において「診療記録」とは、診療録、手術記録、看護記録、検査所見記録、画像記録その他診療の過程において作成された記録をいい、電磁的記録を含む。 2 当院は、診療記録を電子カルテシステム(以下「本システム」という。)により電磁的記録として作成し、及び保管することを原則とする。 3 この規程は、当院の職員全てに適用する。

第3条(管理責任者) 1 診療記録の保管及び管理を統括する者として、診療記録管理責任者を置き、院長をもってこれに充てる。診療記録管理責任者は、本システムのシステム管理者を兼ねる。 2 院長は、必要がある場合は、診療記録管理責任者を別に指名することができる。 3 診療記録管理責任者は、診療記録の保管状況の把握、本システムのアクセス権限の管理、職員への周知及び教育、並びにこの規程の見直しを行う。

第1条の第2項と、第2条の第2項が要です。この規程が運用管理規程を兼ねると最初に宣言し、診療記録は本システムの中にあると定義しておく。これで以降の条がすべて電子カルテ前提で読めるようになり、届出にも指導にも同じ1本を出せます。

第4条以降は、保管期間、保管の場所及び媒体、電子保存の基準、入力及び記録の確定、スキャナ等による読み取り、アクセス権限及び識別認証、持出し及び複写、バックアップ及び非常時の対応、監査、開示の請求、廃棄、個人情報の取扱い、周知及び教育、改廃の全17条と、代行入力の範囲を書き込む別表です。クリニック向けと病院向けの2種類を用意していますので、全文をご希望の方は、記事末尾からお問い合わせください。Word形式でお送りします。

そのまま使わないでください、というのが唯一のお願いです。管理責任者、電子カルテのシステム名、紙で受領した記録の扱い、廃棄の方法、そして別表の代行入力の範囲は、必ず自院の実態に置き換えてください。とくに別表を空欄のまま出すと、代行入力の範囲を定めていないものとして扱われます。書いたとおりに運用できる内容にすることが、いちばん大事です。


まとめ

電子カルテで診療しているなら、この規程は取るか取らないかの話ではありません。施設基準の届出でも、個別指導の事前提出でも、いずれ必ず求められます。

紙カルテ前提のひな形を流用しないでください。保管期間と廃棄の条が、そのまま運用との不一致になります。

土台は厚生労働省の運用管理規程文例が使えます。そこに保管期間と廃棄の条を足し、厚生局が指摘している事項を先に条文にしておく。規程は1本にまとめておけば、届出にも指導にも同じものを出せます。

難しい文書ではありません。ただ、届出や指導の直前に気づくと間に合わないというだけです。

医療情報システムの安全管理に関するガイドラインのホームページにはサイバーセキュリティ対策チェックリストも置かれていますので、そちらもチェックしていただいて一緒に保管しておくことをお勧めします。

自院の規程が電子カルテの実態に合っているかの点検、これから作る場合の起案とも、お引き受けしています。サンプル規程の全文送付とあわせて、お気軽にお声がけください。


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