2026/10/12

お知らせ

生活習慣病管理料(Ⅰ)と(Ⅱ)はどちらを取るべきか ── 分かれ目は検査、そして6か月の片道制限

出典  令和8年度診療報酬改定について ※ いずれも医科点数表(令和8年度版)の告示・通知・事務連絡の原文で確認(2026-10-12 時点)


「点数が高いほうがいいだろう」

生活習慣病管理料の(Ⅰ)と(Ⅱ)を選ぶとき、この理由だけで(Ⅰ)を選んでいる医療機関があります。糖尿病なら760点と333点ですから、確かに(Ⅰ)のほうが2倍以上です。

ところが(Ⅰ)は検査・注射・病理診断が包括されます。HbA1cも、血液検査も、別に算定できません。そして一度(Ⅰ)を算定すると、6か月間は(Ⅱ)に移れません。

点数表だけを見て決めると、この2つを見落とします。選び直せるのは半年後です。

1. 点数の整理

まず金額を並べます。どちらも月1回、算定できるのは許可病床200床未満の病院か診療所です。

区分

主病

点数

生活習慣病管理料(Ⅰ)

脂質異常症

610点

生活習慣病管理料(Ⅰ)

高血圧症

660点

生活習慣病管理料(Ⅰ)

糖尿病

760点

生活習慣病管理料(Ⅱ)

主病を問わず

333点(情報通信機器を用いた場合 290点)

加算は4つあります。

加算

点数

令和8年度改定

充実管理加算

30点/20点/10点

旧・外来データ提出加算を再編(名称変更)

血糖自己測定指導加算

500点(年1回)

従前からある

眼科医療機関連携強化加算

60点(年1回)

新設

歯科医療機関連携強化加算

60点(年1回)

新設

このうち届出が必要なのは充実管理加算だけです。

血糖自己測定指導加算は対象が狭く、2型糖尿病でインスリン製剤を使用していない方のうち、HbA1cが一定以上の方に限られます。月20回以上の自己測定と、その報告に基づく指導が前提です。「年1回500点が取れる」と読まないでください。

2. 違いは包括の範囲と、要件が3つ

施設基準(注1)は(Ⅰ)(Ⅱ)で同じです。通知が両者を一括して定めています。療養計画書の扱いも同じです。

違うのは、包括される範囲と、次の3つの要件です。

項目

(Ⅰ)

(Ⅱ)

検査・注射・病理診断

包括(別に算定できない)

出来高(別に算定できる)

医学管理等

第1部がまるごと包括(除外は5区分)

第1節のみ包括(除外は37区分)

血液検査を6か月に1回以上

要件(令和8年度に追加)

要件ではない

6か月の切り替え制限

なし

(Ⅰ)のあと6か月は算定できない

情報通信機器を用いた場合

設定なし

290点(別に届出が必要)

ここが実質的な分かれ目です。(Ⅰ)は検査が包括されるので、検査をするほど手元に残りません。(Ⅱ)は検査が出来高で残るので、検査をすればその分が積み上がります。

医学管理等の扱いも差が大きいところです。(Ⅰ)は第1部がまるごと包括され、別に算定できるのは5区分だけです。(Ⅱ)は第1節のみが包括で、除外が37区分あります。自院で立てている医学管理料のうち、どれが(Ⅰ)で消えてどれが(Ⅱ)で残るかを、実際の区分番号で突き合わせてください。ここを見ずに点数だけを比べると、(Ⅰ)に移った月に医学管理料がまとめて消えます。

分かりやすい対比が外来栄養食事指導料です。(Ⅰ)では包括されて算定できませんが、(Ⅱ)では別に算定できます。逆に糖尿病透析予防指導管理料は、(Ⅰ)(Ⅱ)のどちらでも別に算定できるので、選択の分岐にはなりません。

なお特定疾患療養管理料は、(Ⅰ)(Ⅱ)のどちらでも包括されて算定できません。ここは(Ⅱ)にすれば残る、という類のものではありません。

3. 見落としやすいのは6か月の片道制限

ここが本題です。(Ⅰ)を算定した日の属する月から6か月以内は、(Ⅱ)を算定できません。

逆向きには、この制限が置かれていません。(Ⅱ)から(Ⅰ)へ移る場合の待機期間は定められていません。

つまり選択は片道です。(Ⅰ)から始めて「検査が包括されて合わない」と気づいても、半年は動けません。(Ⅱ)から始めて「(Ⅰ)のほうがよかった」と気づいた場合は、待つ必要がありません。

迷っている段階なら(Ⅱ)から入るほうが後戻りできる、というのが制度の構造です。点数の大小だけで(Ⅰ)を選ぶと、この非対称性を踏みます。

4. 点数差をどう読むか

(Ⅰ)と(Ⅱ)の差を引き算すると、次のようになります。

主病

(Ⅰ)

(Ⅱ)

差

差の12か月分

糖尿病

760点

333点

427点

5,124点(51,240円)

高血圧症

660点

333点

327点

3,924点(39,240円)

脂質異常症

610点

333点

277点

3,324点(33,240円)

読み方はこうです。12か月を通した合計で、包括される検査・注射・病理診断と医学管理料の点数が、この差の12か月分を超えるなら(Ⅱ)のほうが収入は大きくなります。超えないなら(Ⅰ)のほうが大きくなります。

ここを月単位で考えると判断を誤ります。(Ⅰ)でも血液検査は6か月に1回以上で足りるため、検査が立たない月が大半という患者層が珍しくありません。検査をした月だけを見て(Ⅱ)が有利と読むと、逆の結論になります。

そして、検査をする月だけ(Ⅱ)に寄せるという運用もできません。前の章の6か月の制限があるためです。選ぶのは患者ごと、1年単位です。(Ⅱ)には血液検査の回数要件がないので、検査の頻度そのものは診療上の判断で決めてかまいません。

したがって「当院はどちらか」ではなく「この患者層ならどちらか」で考えることになります。手元のレセプトから、算定している患者さんの12か月分の包括対象点数を拾い、上の表の金額と並べてください。

2点、付け加えます。

(Ⅰ)は主病によって点数が変わるので、高血圧症と糖尿病を併せ持つ患者さんでは、どれを主病として立てるかで点数が変わります。カルテの主病の記載がそのまま点数を決めます。

もう1点は患者さんの負担です。(Ⅱ)は検査が出来高になるため、同じ診療内容でも窓口での負担が上がります。院の収入だけで決めると、切り替えた月に患者さんから説明を求められます。

5. 施設基準はある。届出が要らないだけ

もう一つ誤解されているのが施設基準です。「生活習慣病管理料に施設基準はない」と説明されることがありますが、正確ではありません。基準はあります。届出が要らないだけです。

通知は、注1の施設基準について「当該基準を満たしていればよく、特に地方厚生(支)局長に対して、届出を行う必要はない」としています。満たさなくてよい、とは書いていません。

基準は3つです。

注1の施設基準

生活習慣に関する総合的な治療管理ができる体制があること(多職種と連携して実施することが望ましい)

28日以上の長期の投薬と、リフィル処方箋の交付、どちらも対応できることを院内の見やすい場所に掲示していること

特定健診・健康診断で要治療・要精密検査と判定された方の診療を実施するなど、保険者・都道府県・市町村の取組と連携していること

2番目の掲示は、どちらか一方では足りません。「28日以上の長期の投薬が可能であること」と「リフィル処方箋を交付すること」のいずれの対応も可能であることを掲示する、と疑義解釈に明示されています(令和6年3月28日その1 問144。令和8年度改定後も廃止されていません)。この疑義解釈は厚生労働省が示しているポスターの活用を認めているので、それを貼っていれば文面を自分で作る必要はありません。逆に、掲示そのものがない医療機関は施設基準を満たしていないことになります。

届出が必要なのは充実管理加算(注4)だけで、様式7の11を使います。ただしいきなり出せません。先に様式7の10でデータ提出の届出をし、試行データを提出して厚生労働省保険局医療課から連絡を受けた後に、はじめて届出ができます。

この加算で誤解が多いのは、30点・20点・10点の区分が相対評価だという点です。加算1(30点)は届出医療機関全体の上位20%、加算2(20点)は上位50%、加算3(10点)はそれ以外です。届出をすれば30点が取れるわけではありません。なお実績の要件は、集計期間中にその主病で管理した患者が10人以上いる場合に限って適用されます。患者数が少ない医療機関では、そもそも実績の判定に乗りません。

経過措置もあります。令和8年3月31日時点で現に注4の届出をしている医療機関は、令和9年3月31日までの間、加算1の実績要件を満たしているものとして扱われます。ここで混乱しやすいのですが、令和8年3月31日時点の注4は充実管理加算ではなく旧・外来データ提出加算です。つまり対象は、旧加算を届け出ていた医療機関です。免除されるのは実績の割合だけで、データ提出の体制そのものは免除されません。これから新規に出す医療機関は経過措置を使えないので、実質は加算3からの出発になります。

なお(Ⅱ)の情報通信機器(注8)については、情報通信機器を用いた診療の届出をしていればよく、注8として別に届け出る必要はありません。

届出が要らないということは、裏返せば、厚生局が書類の段階で形式を見てくれないということです。届出が必要な施設基準なら、出した時点で一度は目を通されます。届出不要の基準にはその機会がありません。一方で、個別指導や審査支払機関の査定の対象から外れるわけではありません。要件を満たしているかどうかを管理するのは自院だけで、指摘を受けるのは遡って返還を求められる場面だということです。

6. 落ちやすいのは計画書そのものではない

療養計画書は、別紙様式9またはこれに準じた様式で説明し、患者の同意を得ます。

実地で指摘を受けやすいのは、計画書の有無より次の3点です。

第一に、交付した計画書の写しを診療録に添付すること。計画書は作っていても、写しが診療録に残っていなければ要件を満たしません。

第二に、継続して算定する月は内容に変更がなければ毎月の交付は不要ですが、概ね4か月に1回以上は交付することが求められます。初回に作ってそのまま、では要件を満たしません。

第三に、血液検査です。これは(Ⅱ)にはない、(Ⅰ)だけの要件です。令和8年度改定で追加されたもので、原則として6か月に1回以上行います。他の医療機関の結果や特定健診の結果を参照できる場合は実施しなくても差し支えありませんが、その結果を診療録に記録する必要があります。参照しただけでカルテに何も書いていなければ、やっていないのと同じに見られます。

眼科・歯科の医療機関連携強化加算も同じ構造です。紹介して終わりではなく、次回の診療時に受診状況を確認し、その内容を診療録に記載したところで算定になります。

なお、計画書そのものについて改定で変わった点が1つあります。患者の署名は要件ではありません。令和6年度の通知には「当該計画書に患者の署名を受けた場合に算定できる」という定めがありましたが、令和8年度の通知からこの一文が外れています。要件は、説明して同意を得ることです。令和6年度の疑義解釈を根拠に「初回は署名が必要」と説明している資料が残っていますが、前提が変わっています。

7. 併算定・算定月で引っかかる点

最後に、見落とすと査定になる点を挙げておきます。

1つは算定する月です。初診料を算定した日の属する月は、生活習慣病管理料を算定できません。初診の月から管理料を立てているレセプトは誤りです。

もう1つは併算定です。

糖尿病を主病とする患者さんで、インスリン製剤、GLP-1受容体アゴニスト、インスリンとGLP-1の配合剤、チルゼパチド製剤のいずれかを投与していて、かつ在宅自己注射指導管理料(C101)を算定している場合は、生活習慣病管理料を算定できません。(Ⅰ)(Ⅱ)いずれの注1ただし書にも、同じ除外が置かれています。

ここは令和8年度改定で緩んだところです。改定前は、糖尿病を主病とする患者でC101を算定していれば、薬剤を問わず生活習慣病管理料は算定できませんでした。改定後は除外が上記の薬剤に限られたので、糖尿病以外の疾患に対する自己注射であれば併算定できます。

逆向きに覚えると事故になります。「併算定できるようになった」で止めると、インスリンを使っている患者で算定してしまいます。見るのは投与している薬剤です。

まとめ

生活習慣病管理料の(Ⅰ)と(Ⅱ)は、点数の大小で選ぶものではありません。判断に必要なのは次の3点です。

見るもの

判断

算定患者の12か月分の検査

包括される検査が差の12か月分(糖尿病51,240円・高血圧症39,240円・脂質異常症33,240円)を超えるなら(Ⅱ)。月単位で見ない

併せて算定している医学管理料

(Ⅰ)は第1部がまるごと包括。区分番号で突き合わせて、消える分を引いてから比べる

迷っているかどうか

(Ⅰ)から(Ⅱ)は6か月動けない。迷うなら(Ⅱ)から

そして施設基準は、届出が要らないだけで存在します。掲示、計画書の写し、4か月に1回の交付、血液検査の記録。このどれかが欠けていても、誰も指摘しません。指摘されるのは、個別指導で遡って返還を求められるときです。

自院のレセプトから(Ⅰ)と(Ⅱ)のどちらが有利かを計算し、算定要件と記載要件が実際に満たされているかを点検するところまで、まとめてご相談いただけます。


山一社労士事務所|オンライン対応で全国対応可 無料相談はこちら