2026/6/8
備忘録
労働保険年度更新チェックリスト|7月10日までに手続きが必要な事業主は必ず確認を
作成日: 2026-06-08
「緑の封筒が届いたけど、何ですか?」
ゴールデンウイーク明けになると事務担当者からよくいただく質問です。なお、大企業等(電子申請義務化の対象となる特定法人)には、令和8年度から緑の封筒ではなく茶封筒の通知書が(↓画像)が届く運用に変わっています(後述)。

年度更新は毎年6月から7月にかけて発生する労働保険の手続きです。前年度の確定と新年度の概算を同時に行うため、集める書類が多く、数字の集計でミスが起きやすいのが実情です。令和8年度は雇用保険料率も変更されているため、例年と同じ計算式を使っていると誤りが生じる可能性があります。この記事では、手続きの概要・期限・実務上の注意点をまとめます。
年度更新とは何をする手続きか
年度更新とは、前年度(令和7年4月1日〜令和8年3月31日)の確定保険料の申告・精算と、新年度(令和8年4月1日〜令和9年3月31日)の概算保険料の申告・納付を同時に行う手続きです。
根拠法令は、概算保険料の申告・納付を定める労働保険の保険料の徴収等に関する法律(以下「徴収法」)第15条、延納(分割納付)を定める同法第18条、確定保険料の申告・精算を定める同法第19条です。
対象となるのは、労災保険・雇用保険のいずれかまたは両方が成立している継続事業(一括有期事業を含む)です。病院・クリニック・介護施設はほぼすべて該当します(直営の公立病院などは労災保険・雇用保険の適用除外のため除く)。
提出先は所轄の都道府県労働局または労働基準監督署です。電子申請(e-Gov)での提出も可能です。
令和8年度の申告・納付期限
申告・納付期間は令和8年6月1日(月)から令和8年7月10日(金)です。
この期限を過ぎると、政府が職権で保険料額を決定し、追徴金(10%)が加算される場合があります(徴収法第21条)。6月に入ったら早めに対応することをお勧めします。
令和8年度の保険料率
令和8年度の労災保険料率は、令和7年度から変更ありません。医療業・社会福祉・介護事業の料率は2.5/1000です。労災保険料は全額事業主負担です。
雇用保険料率は令和8年度から前年度より0.1%(1/1000)引き下げられました。一般の事業の料率は合計13.5/1000(労働者負担5/1000、事業主負担8.5/1000)です。病院・クリニック・介護施設は原則として「一般の事業」に該当します。雇用保険料は事業主と労働者の双方が負担します。
令和7年度の料率で計算書や給与控除の設定を使い回している場合は、令和8年度の率に更新してください。
賃金総額の算定:含める・含めない
確定保険料の計算の基礎となる賃金総額の集計は、ミスが最も起きやすい部分です。
算入するもの:基本給、各種手当、通勤手当(非課税限度額に関係なく全額)、賞与、残業手当、現物給与など
算入しないもの:役員報酬、出張旅費・宿泊費、傷病手当金、育児休業給付、退職金、解雇予告手当など
集計の基準は支払日ではなく締め日です。3月末締め4月25日払いの給与は「前年度分」として前年度の賃金総額に含めます。
延納(分割納付)が使える場合
概算保険料額が40万円以上(労災保険または雇用保険の一方のみ成立している場合は20万円以上)、または労働保険事務組合に委託している場合は、3期に分けて分割納付できます。
各期の納付期限は次のとおりです。
通常納付(窓口・ペイジー等)
第1期(4月1日〜7月31日分):令和8年7月10日
第2期(8月1日〜11月30日分):令和8年11月2日
第3期(12月1日〜3月31日分):令和9年2月1日
口座振替の場合は各期の納付期限が延長されます。
第1期:令和8年9月7日
第2期:令和8年11月16日
第3期:令和9年2月15日
口座振替を新たに利用する場合は事前の申込みが必要です。令和8年度第1期分への申込受付は既に終了している(2月終了)ため、資金繰りにも2か月ほど余裕ができるため、来年度以降の活用をご検討ください。
実務担当者がつまずきやすいポイント
緑の封筒が届かない・封筒の色が違う(令和8年度からの変更):電子申請が義務付けられている特定法人(資本金1億円超等の大企業)を対象に、令和8年度の年度更新から紙の申告書が入った緑の封筒の発送が原則廃止されました。代わりに、電子申請に必要なアクセスコード等が記載された通知書が定型サイズの茶封筒で届きます。「今年は封筒が来ない」「去年と封筒の色が違う」と担当者が戸惑うケースが想定されますが、手続き期限(令和8年7月10日)は変わりません。茶封筒が届いた場合はe-Gov等から電子申請を期限内に完了させてください。
通勤手当の算入漏れ:所得税の非課税限度額(月15万円)を超えた分だけ算入すればよい、と誤解しているケースがあります。労働保険の賃金総額には、通勤手当は非課税・課税を問わず全額算入します。社会保険(標準報酬月額)の算定ルールと混同しないよう注意してください。
パート・アルバイトの集計漏れ:雇用保険の被保険者資格がない週20時間未満の短時間労働者であっても、労災保険の賃金総額には算入が必要です。「雇用保険に入っていないから集計不要」という誤りが現場で多く見られます。
賞与の集計漏れ:月例給与の台帳だけを確認して賞与台帳を見落とすケースが散見されます。年間を通じた賞与の支給実績を必ず確認してください。
兼務役員の誤算入:取締役兼部長など兼務役員の報酬については、役員報酬部分は除外し、使用人として支払われる給与部分のみを算入します。
実務チェックリスト
□ 令和7年度(前年度)の賃金台帳・賞与台帳を揃えた
□ 通勤手当を全額(非課税分含む)算入した
□ 雇用保険非加入のパート・アルバイトも労災分に算入した
□ 賞与・一時金の支給実績を確認した
□ 兼務役員がいる場合は役員報酬部分を除外した
□ 賃金集計の基準が「締め日」であることを確認した(支払日ではない)
□ 令和8年度の雇用保険料率(一般:13.5/1000)を使用している
□ 概算保険料が40万円以上の場合は延納を検討した
□ 電子申請または書面申請の準備が整っている
□ 令和8年7月10日(金)までに提出・納付する予定を組んだ
まとめ
労働保険年度更新の申告・納付期限は令和8年7月10日(金)です。通勤手当の全額算入やパート・アルバイトの集計漏れなど、毎年繰り返されやすいミスに注意が必要です。賃金総額は「締め日基準」で集計し、賞与・現物給与の計上漏れがないか必ず確認してください。
手続きに不安がある、自院(施設)の状況を確認したいという場合は、お気軽にご相談ください。
