2026/7/20
お知らせ
院内掲示はデジタルサイネージでもよい|疑義解釈その10(令和8年7月17日)で明確化
作成日: 2026-07-21
院内に貼る掲示物が、年々増えていませんか。
明細書の無償交付、医療DX推進の体制、かかりつけ医機能、後発医薬品の使用体制、外来感染対策の実施状況。令和8年度改定でさらに項目が増え、待合室の壁が掲示だらけになっている医療機関は少なくありません。
この掲示について、令和8年7月17日付の疑義解釈資料(その10)で、実務に効く回答が示されました。デジタルサイネージ等の電子的表示による掲示を行ってよいか、という問いに対し、差し支えないという答えが出ています。
ただし条件が三つ付いています。ここを外すと掲示していないことになりかねないため、内容を整理しておきます。

結論:モニター掲示は可能。ただし紙の備え付けは必要
先に結論をお伝えします。
デジタルサイネージやモニターでの掲示は認められました。壁一面の掲示物をモニター1台に集約することもできます。
ただし、紙をゼロにはできません。掲示内容を記載した紙媒体を院内に備え付け、かつ「紙で閲覧できます」と表示しておく必要があります。モニターに置き換えたつもりで紙を撤去してしまうと、要件を満たさなくなります。
疑義解釈その10で示された内容
今回の回答は、保険医療機関だけでなく保険薬局、訪問看護ステーションも対象です。
健康保険法に基づく保険医療機関及び保険医療養担当規則などの各規則、告示、通知により院内掲示が定められている事項について、電子的表示(デジタルサイネージ等)による掲示を行ってよいか、という問いに対し、差し支えないとされました。
そのうえで、次の条件が示されています。
満たすべき三つの条件
1. 利用者が容易に視認し、内容を適切に確認できること
モニターの設置場所と大きさの話です。受付の奥にあって患者から見えない、文字が小さくて読めない、といった状態では認められません。待合室の椅子から自然に目に入る位置と文字サイズを確保してください。
2. 切り替え表示なら、数分以内に一巡すること
複数の内容をスライドで順番に表示する方式を使う場合の条件です。回答では「数分以内に一巡して表示される等、利用者が当該内容を全て確認できる状態を確保すること」とされています。
掲示項目が多いからと10分かけて一巡する設定にすると、待ち時間の短い患者は全部を見られません。項目数が増えるほど、1枚あたりの表示時間を短くするか、1枚に複数項目をまとめるかの調整が必要になります。実際に待合室に座って、一巡するまで待ってみるのが確実です。
3. 紙媒体を備え付け、その旨を表示すること
ここが最も見落とされやすい条件です。
利用者から求めがあった場合に速やかに閲覧できるよう、掲示内容を記載した紙媒体を院内に備え付けることが求められます。さらに、その掲示内容を紙媒体で閲覧できる旨を表示しなければなりません。
つまり紙のファイルを置くだけでは足りず、「掲示内容は紙でもご覧いただけます。受付にお申し出ください」といった案内を出す必要があります。ファイルを置いてあっても、患者がその存在を知らなければ意味がない、という趣旨でしょう。
医療法など他の法令に基づく掲示は別扱い
もう一点、注意が必要です。
回答では、医療法等、健康保険法以外の法令に基づき掲示が求められている事項については、それぞれの法令の規定に従うこととされています。
今回の疑義解釈を出したのは厚生労働省保険局医療課です。つまり健康保険法に基づく掲示について「差し支えない」と答えたものであり、医療法に基づく掲示については判断していません。だからこそ回答の末尾で、他の法令によるものは切り離しているわけです。
院内の掲示は、根拠となる法令によって所管が分かれます。
根拠法令 | 主な掲示内容 | 所管 |
|---|---|---|
健康保険法(療養担当規則・施設基準) | 明細書の無償交付、医療DX推進の体制、かかりつけ医機能、外来感染対策、後発医薬品の使用体制など | 地方厚生局 |
医療法(第14条の2ほか) | 管理者の氏名、診療に従事する医師・歯科医師の氏名、その医師ごとの診療日・診療時間など | 都道府県(保健所) |
前者は個別指導や適時調査で、後者は医療監視(立入検査)で確認されます。同じ壁に貼ってあっても、見に来る役所が違うということです。
したがって、医療法に基づく掲示をモニターに移してよいかどうかは、管轄の保健所にご確認ください。医療法施行規則には電磁的方法として映像面に表示する方法の規定があり、電子表示の素地自体はありますが、これが医療法第14条の2の院内掲示にそのまま及ぶかは別の話で、運用は都道府県の判断によります。
現実的な進め方としては、まず掲示物を健康保険法に基づくものと医療法に基づくものに仕分けてください。そのうえで、健康保険法に基づくものは今回の疑義解釈に沿ってモニター化し、医療法に基づくものは保健所の確認が取れるまで紙のまま残す。この順序が安全です。
なお、どちらを優先してデジタル化したいかは、医療機関の規模によって変わります。
医師が院長一人の診療所であれば、管理者氏名や医師名、診療日時といった医療法系の掲示が書き換わることはほとんどありません。手間がかかるのは改定のたびに増減する施設基準の掲示のほうですから、健康保険法系をモニター化するだけで負担はかなり軽くなります。
一方、常勤・非常勤の医師が多く、異動や入れ替わりが頻繁な中規模以上の病院では話が逆になります。医療法では診療に従事する医師の氏名と、その医師ごとの診療日・診療時間を掲示することが求められるため、医師が入れ替わるたびに書き換えが発生します。外来担当表と連動させて掲示を更新している医療機関にとっては、こちらのほうがはるかに手間のかかる掲示です。
そうした医療機関こそ電子的表示の利点が大きいわけですが、今回の疑義解釈はそこまでは踏み込んでいません。医療法系の掲示をモニター化したい場合は、都道府県の担当部署や保健所に事前相談されることをお勧めします。
デジタル化のメリットと、現実的な判断
モニター化には実務上の利点があります。
改定のたびに掲示内容を差し替える手間が減ります。令和8年度改定では掲示事項が増え、印刷して貼り直す作業が発生しました。データを差し替えるだけで済むなら、次の改定は楽になります。
掲示物が壁を埋め尽くす状態も解消できます。待合室の見た目が整うのは、患者から見た印象という意味でも小さくない効果です。
一方で、導入費用と、停電・故障時の対応は考えておく必要があります。モニターが映らない間は掲示していない状態になりますから、その意味でも紙媒体の備え付けは保険として機能します。
すでに院内モニターで待ち時間案内や健康情報を流している医療機関であれば、そこに掲示事項を組み込むのが最も現実的です。新規に導入するかどうかは、掲示物の量と改定対応の手間を天秤にかけて判断されるとよいでしょう。
あわせて点検したい掲示の実務
今回の疑義解釈をきっかけに、掲示そのものを点検しておくことをお勧めします。
掲示事項のなかには、院内掲示だけでなくウェブサイトへの掲載(当HP記事:「令和8年診療報酬改定後のHP掲示、更新できていますか?掲示文を自動生成できる無料ツールを公開します」)も求められるものがあります。かかりつけ医機能や医療DX推進の体制などが該当し、院内には貼ってあるがホームページには載せていない、という状態は要件を満たしません。院内をモニター化しても、この掲載義務がなくなるわけではない点にご注意ください。
むしろ、モニター化を検討するタイミングは掲示内容を洗い出す好機です。院内に表示する内容とウェブサイトに載せる内容は同じものですから、一度整理すれば両方に使えます。
当事務所では、施設基準のHP掲示文を自動生成できる無料ツールを公開しています。医療機関名を入力すると届出データと照合して掲示が必要な項目をチェックし、掲示文のテンプレートを表示するもので、令和8年度改定に対応した71種類の施設基準を収録しています。改定で新設された加算には印が付くため、掲示義務の見落としを防げます。ご希望の方はお問い合わせフォームから「HP掲示ツール希望」とご連絡ください。
また、掲示内容と実態がずれていないかも確認してください。届出をやめた加算の掲示が残っている、体制が変わったのに文言が古いままである、といったケースが見受けられます。掲示は施設基準の要件であると同時に、患者への説明でもあります。実態に合わない掲示は、指導の際に指摘を受けるだけでなく、患者との関係でも問題になり得ます。
まとめ
令和8年7月17日の疑義解釈その10により、健康保険法に基づく院内掲示は、デジタルサイネージ等の電子的表示で行ってよいことが明確になりました。
条件は三つです。患者が容易に視認し内容を確認できること。切り替え表示なら数分以内に一巡すること。そして紙媒体を備え付け、紙で閲覧できる旨を表示することです。
掲示事項は改定のたびに増えており、紙で管理し続けることの負担は年々重くなっています。今回の明確化は、その負担を軽くする方向の回答だと受け止めています。ただしデジタル化すれば紙が不要になるわけではなく、あくまで併用が前提である点は誤解のないようにしてください。
掲示は地味な論点ですが、施設基準の要件である以上、満たしていなければ加算そのものの算定が問われます。システム対応よりも、こうした掲示や書面の整備のほうが指摘を受けやすいというのが実務の感覚です。改定から2か月が経ち、届出も一段落したこの時期に、一度点検されてはいかがでしょうか。
院内掲示の内容が現在の届出状況と合っているか確認したい、掲示文やホームページ掲載用の文面を整えたいといったご相談がありましたら、こちらまでお問い合わせください。個別に対応いたします。掲示文の作成には、当事務所が無料で公開しているHP掲示文ツールもご利用いただけます(お問い合わせフォームから「HP掲示ツール希望」とご連絡ください)。
