2026/6/29

備忘録

夏季賞与で間違えやすい|賞与支払届と社会保険料の実務ポイント

作成日: 2026-06-29


「夏のボーナスを払ったあと、何か届出っているんだっけ?」

毎年6月から7月にかけて、夏季賞与に関するご相談が増えます。賞与は毎月の給与とは保険料の取り方も届出のしかたも違うため、ベテランの担当者でも取り違えやすい論点がいくつもあります。この記事では、賞与支払届の基本から、退職する人への賞与や育児休業中の賞与など「間違えやすいポイント」までをわかりやすく整理します。


賞与支払届の提出期限は「支給後5日以内」

賞与を支給したら、「健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届」を年金事務所(または健康保険組合)へ提出します。提出期限は賞与支給日から5日以内です(健康保険法第48条・厚生年金保険法第27条の届出義務に基づくもの)。

この届出をもとに、賞与にかかる社会保険料が決まります。提出が遅れると保険料の決定や将来の年金記録に影響しますので、支給後すぐに手続きしましょう。e-Gov等による電子申請も可能です。


標準賞与額の決め方と「年度の上限」

賞与にかかる社会保険料は、賞与の総支給額(税引き前)から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に保険料率をかけて計算します。

上限には次の2つがあります。混同しやすいので注意してください。

区分

上限

健康保険

年度(4月〜翌3月)の累計で573万円

厚生年金保険

1か月あたり150万円

健康保険の573万円は「年度の累計」で、毎年4月1日にリセットされます。夏季賞与は新年度に入って最初の賞与ですので、前年度の冬季賞与は累計に含めません。年をまたいで合算してしまうミスにご注意ください。

なお厚生年金保険料率は18.300%(労使折半)です。健康保険料率・介護保険料率は都道府県や年度で変わるため、必ず協会けんぽの最新の料額表でご確認ください。令和8年度は子ども・子育て支援金率(0.23%)が健康保険料率に上乗せされている点もあわせて確認が必要です。


間違えやすい3つの落とし穴

1. 退職する人に払った賞与

退職する月(資格喪失月)に支給した賞与には、原則として社会保険料はかかりません。ただし保険料がかからない場合でも、賞与支払届の提出は必要で、標準賞与額として年度の累計(573万円)には算入します。「保険料が出ないから届出も不要」と考えるのは誤りです。

さらに注意したいのが月末退職です。月末日に退職すると資格喪失日は翌月1日となり、その月は被保険者期間に含まれるため、賞与にも保険料がかかります。退職日が「月末」か「月末より前」かで、保険料の要否が正反対になります。

2. 育児休業中の賞与は「連続1か月超」が条件

令和4年10月の改正で、育児休業中の賞与にかかる保険料が免除されるのは、賞与支給月の末日を含む連続した1か月を超える育児休業を取得した場合に限られることになりました。

毎月の給与(月額保険料)は「月末時点で育休中」または「同一月に14日以上の育休」で免除されますが、賞与の保険料はこれだけでは免除されません。数日〜2週間程度の短期の育休では、月額保険料は免除でも賞与の保険料は免除されないケースが多く、最も間違えやすいところです。

3. 賞与を払わなかった年は「不支給報告書」

賞与支払予定月を登録している事業所が、その月に賞与を支給しなかった場合は「賞与不支給報告書」を提出します。支給があれば賞与支払届、支給がなければ不支給報告書、という整理です(令和3年4月に総括表は廃止されました)。


雇用保険料と源泉所得税も忘れずに

賞与は雇用保険でも「賃金」に含まれますので、賞与からも雇用保険料を控除します。令和8年度の一般の事業の労働者負担は5/1,000です(建設業など一部の業種は6/1,000)。社会保険のような上限や1,000円未満の切り捨てはなく、支給額にそのまま料率をかけます。

源泉所得税は、前月の給与(社会保険料控除後)と扶養親族等の数から「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和8年分)」で率を求め、賞与から社会保険料を引いた額にその率をかけて計算します。前年分の表を流用しないようご注意ください。なお住民税は賞与からは引きません。


まとめ

賞与の実務は、提出期限(支給後5日以内)、健康保険の年度上限573万円(4月リセット)、退職月の賞与、育休中の賞与免除(連続1か月超)など、毎月の給与とは別のルールが数多くあります。一つの取り違えが保険料の過不足や年金記録のずれにつながります。

「この賞与は届出が必要?」「退職予定者のボーナスはどう処理する?」といった迷いがありましたら、お気軽にご相談ください。給与計算・社会保険手続きの実務を丁寧にサポートします。


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