2026/7/7
備忘録
算定基礎届のあとが本番|9月からの標準報酬月額と随時改定の落とし穴
作成日: 2026-07-06
「算定基礎届を出したから、社会保険は一段落」
毎年7月、算定基礎届(定時決定)の提出を終えてほっとされる担当者は多いのですが、実は本番はそのあとにあります。届出で決まった新しい標準報酬月額を給与へ正しく反映し、さらに秋以降の昇給などで生じる随時改定まで見据えて初めて、手続きが完結します。この記事では、算定基礎届のあとに間違えやすいポイントを整理します。
定時決定で決まった標準報酬月額は「9月分」から
算定基礎届は、4月から6月に支払った報酬をもとに、その人の標準報酬月額を決め直す手続きです。ここで決まった新しい標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月までの一年間に適用されます。
大切なのは、適用が「9月分の保険料から」という点です。7月や8月にさかのぼって変わるわけではありません。給与ソフトに新しい標準報酬月額を登録するときは、適用開始を9月に設定することが第一歩です。
給与への反映は「控除のタイミング」で変わる
9月分の保険料を、実際にどの月の給与から差し引くかは、会社の控除方法によって変わります。
社会保険料の控除には、当月分をその月の給与から引く「当月控除」と、当月分を翌月の給与から引く「翌月控除」があります。多くの会社は翌月控除を採用しており、その場合、9月分の保険料は10月に支払う給与から新しい金額で控除することになります。
ここを取り違えると、全社員の社会保険料が一か月ずれて反映されてしまいます。自社が当月控除か翌月控除かを確認し、どの月の給与明細から金額が変わるのかを、あらかじめ決めておきましょう。給与ソフトによっては、算定基礎届の完了と給与への取り込みが別の操作になっていることもあり、取り込みを忘れると古い保険料のまま計算されてしまう点にも注意が必要です。
昇給や手当の新設は「随時改定」の対象になる
定時決定はあくまで4月から6月の報酬をもとにした年に一度の見直しです。そのため、7月以降に昇給をしたり、新しい固定的な手当を設けたりして給与が大きく変わった場合は、定時決定とは別に随時改定(月額変更届)の対象になることがあります。
随時改定の主な要件は次の三つです。固定的賃金に変動があったこと、変動した月から三か月の報酬の平均が、それまでの標準報酬月額と比べて二等級以上変わること、そしてその三か月がいずれも支払基礎日数の条件を満たしていることです。これらを満たすと、四か月目に標準報酬月額を改定します。
基本給の変更だけでなく、役職手当や資格手当のような毎月決まって支払う手当を新設・変更した場合も、固定的賃金の変動にあたります。「昇給はしていないから関係ない」と考えず、手当の見直しも対象になることを押さえておきましょう。
随時改定の起算月は「変動した賃金が支払われた月」
随時改定でつまずきやすいのが、三か月をどこから数えるかです。起算月は、変動した固定的賃金が実際に支払われた月です。
たとえば締め日と支払日の関係で、昇給した月の労働分が翌月の給与で支払われる場合、その支払った月が起算月になります。働いた月ではなく、支払った月から数える点に注意してください。ここを一か月間違えると、随時改定の判定時期そのものがずれてしまいます。
具体例で見てみましょう。7月1日から新しい手当を設けたケースで、支払いのサイクルによって起算月がどう変わるかを比べます。
末日締め・翌月払いの会社の場合、7月の労働分の給与を支払うのは8月です。したがって手当が実際に支払われるのは8月給与からで、起算月は8月になります。8月・9月・10月の三か月を見て要件を満たせば、その翌月である11月に改定します。
一方、同じ7月に手当を設けても、当月払い(7月の労働分を7月に支払う)の会社では、起算月は7月です。7月・8月・9月の三か月を見て、10月に改定します。
7月1日に手当を新設した場合の比較を、表にまとめます。
給与の支払サイクル | 手当の初回支払 | 起算月 | 見る3か月 | 改定月 |
|---|---|---|---|---|
末日締め・翌月払い | 8月の給与 | 8月 | 8・9・10月 | 11月 |
当月払い | 7月の給与 | 7月 | 7・8・9月 | 10月 |
このように、手当を設けた月が同じでも、締め日と支払日の関係で起算月と改定月が一か月ずれます。自社の給与がいつの労働分をいつ支払う形なのかを確認することが、判定時期を間違えない第一歩です。
なお、保険料率の改定など会社の意思によらない変動は、随時改定の対象にはなりません。あくまで昇給や手当の新設など、固定的賃金そのものが変わった場合が対象です。
まとめ
算定基礎届は、出して終わりではありません。決まった標準報酬月額は9月分から適用され、給与への反映は控除方法によって当月または翌月の給与から変わります。さらに、秋以降の昇給や手当の新設があれば随時改定の対象になり、その起算月は賃金が支払われた月で数えます。
こうしたタイミングの取り違えは、社会保険料の過不足や将来の年金額のずれにつながります。「うちの控除は当月か翌月か」「この昇給は随時改定にあたるのか」といった迷いがありましたら、お気軽にご相談ください。定時決定から随時改定まで、給与計算と社会保険手続きを一貫してサポートします。
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