2026/11/3

備忘録

年末調整の控除証明書、従業員によく聞かれる5つのこと

毎年10月から11月にかけて、生命保険会社やiDeCoの運営機関から控除証明書が届きます。最近は「電子データで交付します」という案内も増えました。

年末調整の書類を集める時期になると、同じ質問が繰り返し来ます。

「国民健康保険の証明書が見当たらないんですが」 「保険会社からメールで届いたんですけど、これどう出せばいいですか」 「証明書をなくしました。間に合いません」

どれも、その場で答えられないと手が止まります。従業員にそのまま伝えられる形で、5つの答えをまとめました。

1.「国民健康保険の証明書が見当たりません」と言われたら

「出さなくて大丈夫です」と答えて構いません。

証明書が要るのは、本人が直接払っている保険料のうち国民年金と国民年金基金だけです。国民健康保険・介護保険・後期高齢者医療は、法律上そもそも証明書を求められていません。

給与から天引きしている健康保険・厚生年金・雇用保険も同じで、証明書はありません。会社が1年分を集計します。

控除の種類

控除証明書

添付・提示

社会保険料控除(給与から天引き)

使いません

不要(会社が集計)

社会保険料控除(国民年金・国民年金基金)

届きます

必要

社会保険料控除(国民健康保険・介護保険・後期高齢者医療)

自治体によります

不要

小規模企業共済等掛金控除(iDeCo・小規模企業共済)

届きます

必要

生命保険料控除

届きます

必要(一部例外あり。第2章)

地震保険料控除

届きます

必要(金額に関係なく全部)

中途入社の方がいたら、前職の源泉徴収票を必ず回収してください。前職で天引きされた社会保険料も合算するので、これがないと計算が合いません。

2.「出した証明書は返ってきますか」と聞かれたら

返りません。税務署に送るわけでもなく、会社で保管します。

保管の期間は、提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年です。税務署から求められたときに会社が出す仕組みなので、本人の手元には戻りません。

ここは先に案内しておくと親切です。住宅ローン控除や医療費控除で確定申告をする方は、同じ証明書を使うことがあります。提出前にコピーを取るよう伝えておけば、1月に「返してほしい」と言われずに済みます。

集める側として押さえておきたいのは、証明書は一部の例外を除いて全部必要だという点です。金額が小さいから要らない、という扱いは基本的にありません。

例外は旧生命保険料(平成23年12月31日までに締結した契約)だけで、一契約の保険料が9,000円以下のものは添付が要りません。これも配当(剰余金の分配・割戻金)を受けている場合は、それを差し引いた後の額で判定します。

新生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料・地震保険料には、このような下限がありません。とくに地震保険料は少額でも必要です。要らないだろうと判断して出さずにおくと、差し戻しになります。

3.「保険会社からメールで届いたんですけど」と言われたら

ここが一番詰まるところです。電子データで交付された場合、出し方は3通りあります。

ルート

やること

使える場面

① 紙の証明書を使う

郵送された紙を申告書に添付または提示する

紙も届いている場合

② 電子データのまま出す

保険会社の電子署名が付いたデータを、申告書の記載事項と一緒に電子で提出する

会社が年末調整を電子化している場合

③ 電子データを紙に出す

国税庁のシステムで二次元コード付きの書面を作り、申告書に添付する

会社が電子データを受け付けない場合

②を受け付けるには、会社側が電磁的提供を受けるための措置を講じていることが条件です。年調ソフト等での提出を案内していなければ、①か③になります。

知らないと答えに詰まるのが③です。電子データで交付されたのに会社は紙運用、という組み合わせは珍しくありません。国税庁が「QRコード付証明書等作成システム」を公開していて、手元の電子データから二次元コード付きの書面を作れます。これを紙の証明書と同じように添付できます。

従業員にはこのページを案内してください。

QRコード付証明書等作成システムについて(国税庁 e-Tax)

なお、このシステムはパソコンで作成するもので、スマートフォンは推奨環境外です。初回は事前準備セットアップが必要です。「スマホしか持っていない」という方がいる場合は、紙の再発行を保険会社に依頼してもらうほうが早いこともあります。

4.「証明書をなくしました」と言われたら

年末調整を止める必要はありません。

証明書の交付を請求中などで確認できない場合でも、翌年1月末日までに提出または提示することを条件に、控除をしたところで年末調整を行ってよいことになっています。再発行を待つ間も進められます。

ただし1月末日までに出てこなければ、その控除を外して年末調整をやり直し、不足額を徴収することになります。年明けの手戻りは重いので、誰の分が未提出かを1月末まで追える形にしておいてください。提出予定者のリストを作り、届いたら消し込む程度で十分です。

5.「来年から確定申告が楽になるって本当ですか」と聞かれたら

確定申告については本当です。ただし年末調整は変わりません。

令和8年分以後の確定申告書を令和9年1月1日以後に提出するときは、控除証明書の添付または提示に代えて、記載事項を書いた明細書を添付できるようになります。対象は3つです。

明細書で代えられる

代えられない

iDeCoなどの小規模企業共済等掛金控除/生命保険料控除/地震保険料控除

社会保険料控除(国民年金・国民年金基金)/雑損控除/寄附金控除

答えるときに添えたい注意が2つあります。

注意点

内容

会社に出す書類は変わりません

これは確定申告の話です。保険料控除申告書は、来年も従来どおり証明書の添付または提示が必要です

証明書は捨てられません

税務署は確定申告期限等から5年間、証明書の提示または提出を求めることができます。求めがあれば出さなければなりません

明細書で出せるようになっても、証明書そのものは5年間手元に置いてもらってください。

まとめ

聞かれたこと

答え

国保の証明書が見当たらない

不要。要るのは国民年金と国民年金基金だけ

給与天引き分の証明書は

ありません。会社が集計します

出した証明書は返ってくるか

返りません。会社が7年保管。必要ならコピーを

メールで届いた

①紙 ②電子のまま ③国税庁のシステムで紙に出す

なくした・間に合わない

翌年1月末日まで。それを過ぎたらやり直し

来年から楽になるか

確定申告だけ。会社に出す書類は変わらない

担当者の側で先に決めておくとよいのは、②を受け付けるかどうかです。受け付けないなら、案内文に③のURLを入れておくだけで問い合わせが減ります。

判断に迷う場合はお問い合わせください。

出典

国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」

国税庁「令和7年度税制改正」

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